木曜日、夕暮れの教室にて。
次の日の木曜日。私と七緒は放課後の教室で作戦会議を開いていた。
「どう?七緒」
「うん…ファンの女の子たちに聞いたら、応援してる途中に足とか髪とか引っ張られたり、貧血とかでもないのに倒れたりしちゃう子が増えてて、最近じゃ応援に来る女の子も減ってるらしいの。悪い噂も流れてるみたいだし…レギュラーたちのあのもやみたいなのをなんとかしないと…」
「噂?」
「『歴代のレギュラー争いに敗れた選手たちの怨霊がいる』とか、『レギュラーがふった女の子が恨んで憑りついてる』とか」
「前者はともかく、後者はあるだろうなぁ」
「あはは…そっちは?」
「一応屋上に塩盛ってきたけど…レギュラーが集まるとこはやっぱり居心地のいい場所じゃなかったよ。ほんと困った…手っ取り早い話、彼らに頼んで簡単な防衛をさせてもらうのが一番なんだけどなあ」
「うーん…それは多分…難しいかな」
「だよね。『霊が憑りついてるから剥がしてあげる』って、どんな気違い女だと思われるか」
「なんとかできるタイミングってないかな…」
私たちがため息を吐いた、その時。
キーンコーンカーンコーン
「「?!」」
私と七緒はびっくりして顔を上げた。私は咄嗟に教室の時計を確認する。おかしい。さっきまで時計は5時をとうに過ぎていた。なのに―――――針は、4時44分を指している。
「っ、咲…!」
「嘘…『向こう側』…?!」
そんな馬鹿な。通常こんなことはおこらない。偶然『向こう側』との境界が緩んだか、それとも―――――
(いや、待って…?)
「っ七緒!テニス部は?!」
「えっ?」
返事を待たずに自分で窓に駆け寄る。天気はいつのまにか悪くなっていて、雨が激しく降っている。テニスコートは相変わらず黒いもやがかかっているが、誰もいない。帰ったのか、と窓を離れようとしたが、視界の端で見えたものに私は蒼白になった。
「咲?どうしたの?!」
「やっぱり…!七緒、今から教室に結界張るから手伝って」
私は鞄の中からお清めの塩を出す。いつも持てるだけは持っているのだが、こんなときに役に立とうとは。
「急いで、七緒。もしかしたらテニス部も来るかもしれない」
「嘘、彼らもいるの?」
「うん、そんで間違いなく―――――この現象は彼らが起こしたものだ」
04.迷路の入り口
(大雨だね…皆、とりあえず校舎の中に入ろう)(部活は中止だなー…)
お題配布元:「夢紡ぎ」様より選択お題369
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