■優勢/キルリ(葉月なな様)


「なあ、キール!」

この世界に来てから、リッドに話しかけられる事が多くなった。
突然召喚され、見ず知らずの人間とクエストを進めることになったのだか、奇跡的にも僕とリッドは同じパーティとなった。
4人中、エターニアから来たのは僕たちだけ、自然と会話も多くなる。
いつもなら、先頭を進みさりげなくファラ達をサポートしているリッドだが、今はルークが常に先頭に立ち、続いて僕とリッド、最後尾にゼロスが続いている。

「なあ、キール!聞いてるのか?」
ふとリッドに視線を落とすと、青い瞳とぶつかった。
僕の顔を上目づかいで見つめるリッドは、とても自分より年上の男性には見えない。
久しぶりの再会を果たした時は、僕の方が少し背が低かった。しかし、すぐにその身長差は逆転した。自分で言うのもなんだが、運動不足だった僕にとって、旅は成長を促す良い刺激になったようだ。

「あのさー、本当に二人は付き合ってないの?」

自然と見つめあいながら会話を続けていた僕たちに、ゼロスがニヤリとしながら問いかける。
ゼロスの言うとおり、僕たちは恋人同士ではない。
しかし、僕がリッドへ思いを寄せている事は事実だ。
中々答えないでいる僕を相変わらず上目づかいで見つめるリッドに、僕の心がちょっとだけ凶暴になった。

「…さあ?どうかな?」

いたずらに微笑むと、背後から視線を感じた。
振りかえらなくてもわかる、おそらくルークが僕を睨みつけているのだろう。
ルークがリッドに一目ぼれしたことぐらい気づいている。
行動こそ起こさないものの、視線は常にリッドに注がれている。

「へぇ〜…ま、俺様は恋人がいようが構わないけどね」

奪えばいいだけだから

そう、小さく呟いたのを、僕は聞き逃さなかった。
一瞬だけ見せた獣のような瞳…そこには僕へのむき出しの闘志があった。
すぐにまたいつもどおりの笑顔に戻り、「リッドちゃん、俺様の嫁になりなよ!」とリッドに抱きつく。
迷惑そうに払うリッドと、嫌悪感いっぱいの顔でゼロスを睨むルークを横目に、僕はため息を一つこぼす。

今までずっと彼を見てきた。
どう考えたってこの戦いは僕が有利だ。
だが、僕が思ってた以上にこの二人は厄介だ。

ならば僕も、全力でリッドを奪いにいくことにしよう



END
>あとがき
ルクリ「はじまり」の続きで、キルリバージョンです。
奥手一途なルークと同じく片思いですが、キャリアがある分加速体制に入ってます。
私はアニメから入ったので、ゲーム設定の身長は旅の最初だけだと思ってます。

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