■贈り物に込める気持ち(クレアリ)


「あら、どうしたの?」
ゆったりとした時間の流れる昼下がり
バンエルティア号のキッチンで昼食分の後片付けを終えたクレアは、おやつの時間にはまだ早いであろう食堂に一人、どことなく疲れた様子で顔を見せたリッドに声をかけた。
「いや・・・ちょっと依頼で世話になったことがあって、そいつらにお礼とかしたいんだけど、どうしたらいいかわかんなくてさ」
考えてもいい案が浮かばなかったため、消費された脳の糖分を補おうと・・・早い話がつまみ食いに来たということだ。
(残念ながら食堂は無人ではなかったので、その目論見は外れてしまったが)

「そう・・・なら、もうすぐバレンタインだし、お菓子を作ってプレゼントするのはどうかしら?」
「バレンタインって、たしか女の子が男にチョコレートを渡す日じゃなかったか?俺もそいつらも全員男なんだけど・・・」
「最近は友達同士や男性から女性へ・・・渡す相手やその意味合いも様々になってきているの。大切なのは相手への感謝の気持ちじゃないかしら」
クレアの言葉に、そういうものなのかとリッドは頷いた。
「アイツらみんな結構甘い物好きだし、いいかもな。でもオレお菓子なんか作ったことねぇな・・・」
料理は自分の食事を賄う程度には出来るが、同じ要領でやっていいものなのだろうか。なんだか大味になってしまう気がしないでもない。
「大丈夫よ。丁度リリスさんたちが買出しから戻るまで時間が空いているの」
簡単なチョコレート菓子の作り方を教えてくれるというクレアの提案に、リッドは有難く乗らせてもらうことにした。


「よっし、出来た!」
焼き上がったブラウニーの粗熱が取れたことを確認し、慎重に包丁を入れて切り分ける。
ラッピングはクレアのアドバイスで、渡す相手に合わせてそれぞれ青・オレンジ・紫・白とリボンの色を変えてみた。
無事完成させられたことにエプロン姿のリッドは小さくガッツポーズをする。
「初めてなら十分すぎるくらいの手際だったわ。すごいわね」
「クレアの教え方が上手かったんだよ」
「そう言ってもらえて私も嬉しいわ。あら?」
話に聞いていた人数分よりも一つ包みが多く、ピンクのリボンでラッピングされたそれに、クレアは分量を間違えただろうかと首を傾げた。
「あ・・・それは、クレアの分。色々教えてもらったお礼、にもならねぇと思うけど」
だってクレアが作った方が絶対に美味いもんな、とリッドはエプロンを外しながらやや申し訳なさそうに苦笑する。
すると、クレアが口元に手を当ててクスクスと笑い始めたので今度はリッドが首を傾げた。
「ふふっ、ごめんなさい。まさか同じことを考えているなんて思わなくて」
そう言ってクレアが赤いリボンでラッピングされた別の包みを取り出す。中にはいつの間に用意したのだろうか、美味しそうなパウンドケーキが入っていた。
「え?オレにくれるのか?でもこれじゃ、オレばっかり貰ってお礼にならないんじゃ・・・」
「そんなことないわ。私もリッドと過ごせてとても楽しかったもの」
だからこれはそのお礼よ、とまで言ってくれるクレアの厚意、受け取らない方が無下にすることになるだろう。
それと、さっきからずっとチョコレートの香りに包まれていて、ぐっと我慢はしていたが、元々つまみ食いをしに来たこともあって正直小腹は空いていたところだった。
「・・・わかった。じゃあ今度狩りの獲物を多めに取ってくるよ。それと力仕事とか依頼とか、手伝ってほしいことが出来たらいつでも言ってくれ」
しかしやはり貰いっぱなしは気が引けたので、リッドは自分に出来うる限りの代案を出してから、包みを受け取った。

「・・・・・・よし、それじゃ渡しに行ってくるかな」
「きっと喜んでもらえると思うわ」
「ハハ、だといいけどな」

色々サンキューな、と最後にもう一度お礼を言って食堂を出て行くリッドの背中に、クレアは「頑張ってね」と手を振った。




最後に文章書いたの2ヶ月くらい前・・・?その所為か思うように書けずやや難産でした・・・
え?5月にバレンタインの話?通常運転ですね

prev back next
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -