■貴方と過ごす時間(ソフィリド)
今回のご容赦頂きたいポイント
・HPが1になる(体力がなくなる)のは極光壁ではなく剣
・極光=オーロラは厳密には虹色じゃないらしい?
・スキットはラストまで見れてませんので七色のクロソフィにまつわる殆どが捏造



「終わり終わり・・・っと」

ルバーブ連山山頂付近
クエストにここを訪れたリッドとソフィは、今しがた依頼内容であるモンスターの討伐を終えた。
癖のある攻撃の多いキアノランティスに大分と手こずらされたリッドは、このまま全身を投げ出して寝転がってしまいたいくらいの疲労感を深い溜息と共に吐き出して、どさりと草むらに腰を下ろす。
秘奥義である『極光壁』は強力だが、使用すると非常に疲れてしまうのが難点だ。

「ん?ソフィ、何してんだ?」
「ここ、お花が咲いてるの」

背後でがさごそと何かをやっている様子のソフィに気付いたリッドが尋ねると、彼女はここがクロソフィという花の生息地であると答えた。
言われてみればあちこちにピンクの小さな花が咲いており、大きな木の根元はちょっとした花畑になっている。
ソフィの話では、記憶喪失である彼女の名前はアスベルにこの花から取ってつけてもらったもので、彼女自身もこの花を気に入っているとのことだった。
バンエルティア号に一つ持って帰りたいと言うソフィは、クロソフィの花を根元から掘り起こしている。

「こうして植木鉢に植え替えれば、長く元気でいられるってシェリアが言ってた」
「そっか」

リッドは頷いて、休息がてらソフィの作業を見守った。
園芸の心得のない自分が手を出してもかえって邪魔になるだろう。
太陽がほんの少し動き、影の位置が変わる頃、バンエルティア号の迎えの時間になったのでリッドはソフィに声を掛けた。
丁度いい具合にリッドの体力も回復し、作業を終えたソフィも手の中のクロソフィを眺めて満足そうだ。
二人は繊細な花を傷つけないようになるべく戦闘を避けながら下山していった。




「・・・・・・」

その翌日の話である。
持ち帰ったクロソフィの鉢植えを持ったソフィが、何故かリッドの後ろをとことことついて来るのだ。
食堂ホール甲板どこでもお構いなしで、男子トイレにまでついて来ようとした時リッドはとうとう音を上げた。

「ソフィは七色のクロソフィが見たいんですよ」

"七色のクロソフィ"とは文字通り七色の花弁を持つクロソフィのことで、その噂を耳にしたソフィも是非見てみたいと思ったらしい。
と、たまたま通り掛かったヒューバートが説明してくれたが、だがリッドにはそれと自分に一体何の関係があるのかがわからない。

「『極光壁』を使用する貴方の身体が虹色に光っていたと言っていましたから、恐らく・・・」

虹色の光を身体から迸らせていたリッドの近くにクロソフィを置いておけば、七色になるのではという発想に至ったのか

「それは多分無理だと思うぜ・・・」

残念ながら極光術にそのような作用はない。筈である。寧ろどちらかというと、そうであってほしい。
自分の身の回りにあるものがどんどん虹色になっていったら、それはもう色々な意味で面倒なことになるだろう。
まして普段から身体を虹色に光らせている訳でもないのでそう言うと、ソフィは明らかにしょぼんとしてしまい、リッドはどうしたものかと頭を悩ませた。

「そんな時はこれだよ!」

背後から突如第三者の声が上がり、気配のなさにリッドは思わず肩を跳ねさせる。
顔をターバンで覆った男は自らをマスク・ド・バロニアと名乗り、リッドにあるものを差し出した。

「そうか!」

マスク・ド・バロニアに渡されたのは絵の具。バンエルティア号ではカノンノが絵を描くので定期的に取り寄せをしているが、恐らくそれの予備だと思われる。
これで花を七色にすればいいと理解したリッドは早速それを借り、クロソフィを彩ってみた。
が・・・不器用、という程ではないのだが圧倒的に芸術センスが足りないらしく、かなり歪な見た目の仕上がりになってしまった。

「・・・リッドの心意気は買わないでもないが、花に絵の具は余り良くないのではないか」

流石にこれは無いなとリッド自身が渋い顔をしている所に、いつから見ていたのか教官ことマリクが控えめに指摘を入れる。
リッドはあっという顔になり、二重の意味で肩を落とした。

「僕の所為で・・・すまない」
「マスク・ド・バロニアさんは悪くねぇよ、オレが馬鹿だっただけだ」
「(・・・リッドは気付いていないのか)」

正体に気付いていないのなら艦内に不審者も同然の見知らぬ人間が居ることになるのだが、まぁ直感的に危険人物ではないと察しているのかもしれない。
そう解釈することで、謝罪するマスク・ド・バロニアことリチャードとリッドのやり取りに突っ込みを入れたい気持ちをマリクは内心に留める。
一方のリッドはなんとか花を元に戻すと、どうすれば七色のクロソフィを用意出来るのかと、頭の、普段使用しない部分をフルに稼働させて考えていた。
その内に何かを思いついたのかリッドの唸りが止まり、植木鉢を持ってどこかへ走り去っていくその姿を見送って暫くして、戻ってきた彼の手にはまさしく綺麗な虹色の花弁を持つ七色のクロソフィがあった。

「すごい・・・!」

ソフィは感嘆の声を上げ顔を輝かせたが、当のリッドは対照的な空気をまとっている。
この七色のクロソフィは研究室に居たパスカルに頼んで(彼女曰くピコポコポンで)作り?生み?出してもらったものなのだが、リッドはこれではさっきの絵の具と変わらないのではないかと思っていた。
勿論パスカルの協力を無下にするつもりは毛頭無いが、自然を歪めた偽物だ。ソフィが欲しがっていたものは本当にこれで良かったのだろうか?
しかし他に方法は浮かばないし、自然の「七色のクロソフィ」が何処にあるのか、噂だけでは突き止められない。
手詰まり感に俯くリッドの髪に、ソフィは受け取った七色のクロソフィをそっと挿して微笑んだ。
リッドはソフィの行動に小さく驚く。己の表情が間抜けなものになっているだろうなと思いながらも、リッドはソフィの真意を図りかね目を丸くしていた。

「七色のクロソフィ、見つかったらリッドにあげたかったの」

わたしのためにリッドがたくさん考えてがんばってくれたこと、うれしかったよ
だからこれでいいのだと、少女は胸の前で指を組んで、花が綻ぶような笑顔を浮かべた。
その笑みから優しくあたたかい気持ちが伝わってきて、リッドも表情を和らげる。

「ソフィ・・・ありがとな」
「ううんわたしこそ、ありがとうリッド」



夜のルバーブ連山
月明かりを頼りに頂上に辿り着いたリッドとソフィの足元には、まもなく風花化を迎えようとしているクロソフィの花々がある。
結局七色のクロソフィを見つけることは叶わなかったが、ソフィはクロソフィの風花をリッドにも見せたいと、お礼を兼ねて誘ったのだった。

「確かに・・・クロソフィの花がうっすら光ってるぜ」
「もうすくだよ」

昼間とは全く異なる花畑の様相を見守っていたその時、背後の闇に獣の低い呻き声が響く。
敵の気配にハッと二人が振り返ると、大きな角が特徴のモンスター、グレルホルンが月光の元に姿を現した。

「くそっ」

ここまで接近を許してしまうほどに気を抜いてしまっていたことに、リッドは自らへの苛立ちを込めて舌打ちをする。
グレルホルンはソフィとリッドを外敵と認識し、その身を大きく振り上げると猛烈な勢いでこちらに突進してきた。
二人はすぐさま応戦したが、不意打ちと激しい連続攻撃にじりじりと戦線の後退を余儀なくされていく。
蹄を大地に打ち付けて繰り出される衝撃波は特に強力で、まともに喰らうとかなりのダメージになる。
それをかわそうとしたリッドだったが、すぐ後ろに今にも風花化しそうなクロソフィの花々があることを思い出し、今避ければ全てが薙ぎ倒されてしまうと、回避行動に一瞬の躊躇いが生まれた。

「うわああああああああああ」
「リッド!」

その一瞬の躊躇いは、戦いの場では隙となり命取りになる。
結果衝撃波を正面から受けたリッドは更にグレルホルンの尾による追撃で花畑の最奥まで弾き飛ばされ、その身体は大樹の幹に叩き付けられた。
崩れ落ちるリッドにソフィはその名を叫ぶ。

「させない!リッドはわたしが守る!」

ソフィは表情を厳しいものに一変させると、リッドを庇うようにグレルホルンとの間に入り、光の速さで敵へ突撃していった。

「刹破衝!霊子障断!」

小柄な身体を生かして相手の懐に飛び込み、間合いを詰めて反撃を加えていく。
敵を浮かせたところに最大級の攻撃を加えるため、ソフィは構えた。

「解放します・・・!必中必倒!クリティカルブレード!!」

ズドンズドンと重い正拳突きを何発も打ち込み、回し蹴りでとどめを刺す。
グレルホルンの巨体が地に沈んだが、まだ完全には倒しきれてないようだ。だがソフィは大きな術技の反動で思うように動くことが出来ない。

「悪いソフィ、助かった。後は・・・任せろ!」

声を掠れさせながらも、リッドは地面に剣を突き刺して力を振り絞る。
その身体が目を開けていられないほどの輝きを放ち、強大なエネルギーが敵を屠らんと集束していく。

「こいつで終いだ!はああああああああ、極光壁ーーーーーーー!」

地上で何が起ころうとも、惑わされることなく静寂の中に佇み続ける月と星の浮かぶ濃紺の夜空に、光の壁が立ち昇る。
次元の狭間に切り裂かれたグレルホルンは断末魔を木霊させながら崖下に落ちていった。
脅威が去ったことが確認され、リッドの身体から力が抜ける。
がくりと地面に膝をついて、ゆっくりと呼吸を整えていく最中にソフィが声を上げた。

「風花が虹色に光ってる・・・!」

新手かと神経を尖らせたリッドだが、それは取り越し苦労だったらしい。

「これの所為か」

リッドは自身の掌を見つめる。
極光壁によって放たれた光と風花の光が輝き合い、クロソフィの花びらが虹色を帯びる。
風花化していたかどうか、太陽光の有無などが日中にこの現象が見られなかった原因として考えられる差異であり、極光壁に限らず特定の強い光を風花化した状態のクロソフィに当てれば「七色のクロソフィ」が見られたのかもしれないが、その辺りは研究者でも専門家でもないので帰って頭の良い奴らに解説して頂くことにしよう。

「大丈夫?」
「ああ、ありがとな」

ソフィがファーストエイドをかけてくれたことにより、リッドの負傷に応急処置が施される。
表情と声に不安を滲ませる少女に対し、あちこち痛むが、暫く休めば下山は可能だとリッドはソフィを安堵させるように笑ってみせた。
先程までの戦闘が嘘のように、夜の花畑に静かに柔らかな風が吹き抜ける。

「七色のクロソフィを見せてくれてありがとう、リッド」

風花化していくクロソフィの花弁と戯れていたソフィは、樹に背を預け、その様子を疲れからくる多少の放心を伴いつつ眺めていたリッドを振り返り、言った。

「オレは何もしてねぇよ。ソフィの想いにクロソフィが応えてくれたんだ」

リッドの言葉に、ソフィは極光の光が立ち消えるのと共に七色ではなくなってしまったが、月光に照らされ仄かに輝くクロソフィに向き直り、心の中でお礼を述べた。

(ありがとう、クロソフィ)

リッドと一緒に過ごす時間をくれて、ありがとう




クロソフィイベいつだったっけってレベルだけど、書き上がりまでに数ヶ月かかるのはよくあること(※ただ管)

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