■どんなお味?(キルリ)
※リッドがド天然


昼下がり、キールは操舵室の自分の定位置で、書物を読み、書類に書き付けるという作業を繰り返していた。
そんな(キールにとって)平和な時間と空間は、ある人物の些細な(?)一言で、崩壊した。

「なぁキール」
「なんだ」
「キスって美味いのか?」

思わず、がたがたがっしゃーん、と典型的ギャグマンガの様な大コケっぷりをキールは披露してしまった。辺りに書物や書きかけの書類が散らばる。
だが、起き上がりつつ、自分は悪くないとキールは己に言い聞かせる。
悪いのは
「なんかさー、レモンとか、いちごだとか、あとさくらんぼとか?そんな味がするらしいけど、果物なのか?美味いのかなぁ・・」
などと抜かし、瞳を輝かせている目の前の天然記念物に違いない。
謎の怒りで身を震わせながら、キールはゆらりと立ち上がる。頭のどこかで何かが切れる音がした。それはもしかしたら理性と呼ばれるものだったかもしれない。

「・・わかった。教えてやるから、そこでじっとしていろ。そして目を瞑れ」
「お、おう・・」

キールの気迫に多少物怖じしつつ、リッドは目を閉じた。その顔に微妙に疑念の意が浮かんでいるが、気に留めない事にする。
キールはゆっくりと距離を詰めた。普段、他人を入れない領域に互いが収まった時、顔に近づくキールの気配にリッドはほぼ無意識に後ずさろうとした。
だがキールが肩を掴み、その動きを封じる。
「じっとしていろ」
リッドが頷く間もなく、唇に何かが触れる。思考が働く前に、それは離れていった。


「・・・・なんだ、いまの」

リッドがポツリと呟き、二人の間に沈黙が落ちる。
キールは既にリッドに背を向けており、その表情は伺えない。無論、当のキールも振り向ける筈もないが、ええいもうヤケクソだ、とキールは何事もなかった様にリッドに問うた。

「で、何味だったんだ」
「・・・・・・・・・・・」
リッドは俯いて、口元に手をやる。
チラリとキールが背後を伺うと

「・・オムレツの味、かな?」

どんがらがっしゃーん、と再び典型的な(以下略)

「あれ?でも果物の味じゃなかったっけ。なんでさっき食べたオムレツの味がするんだ・・?な、キールも一回してくれよ」
「・・・・・・・」
「オムレツ味が・・あ、でも味だけで、実際に腹が膨れてるワケじゃねぇよなぁ・・。やっぱ良いや、ファラにまたオムレツ作ってもらってこよーっと」

そうして、リッドは操舵室を去っていくのであった。
後に、操舵室で暗いオーラを放ちながら、ぶつぶつと書物を読み漁るキールの姿が発見されたとか。

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