アナタノオト | ナノ



07





この星奏学院では、
数年ごとに音楽コンクールが開催させる。


このコンクールに参加した生徒は
その後、世界で活躍することも多く
音楽科の生徒にとって、参加は憧れでもある。




ってな、コンクールに

なぜかいる、私。



昼休みに音楽科の校舎の方に集合っと

朝のHRで担任から言い渡されて、ここまできた。





「ここ?」

大会議室と書かれたプレートを一瞥し、中へ入る。




ギッギギィィィイィイィ…




思わず耳をふさぎたくなるような、

G線のすれる音が響く。




ドアを開けた先では

ヴァイオリンを構えた普通科の子と、それを囲む音楽科の生徒数人。




「どうしたの、コレ」


あまりにもひどい状況で、奥に立っていた蓮のところまで行く。




「柚木先輩の親衛隊だ」


いかにも不快、と顔をしかめた蓮の視線を追うと
案の定、キラキラと何かを飛ばした”柚木先輩”が
日野さんの肩に手を置き、親衛隊を追っ払ってる。


うわぁ。
なんか目に痛い。
キラキラしすぎて眩しい。



なんてふざけたことを考えていると、
親衛隊の方々と入れ替わるように
金澤先生がはいってきた。





「おー、集まってんな。始めるぞー」


その言葉に、参加者は中央に立つ先生の方へ集まる。


「今日は…まぁ、顔合わせぐらいしておいた方がいいといわれてな。
 じゃっ、端から軽く自己紹介な」


そう一番はじに立っていた一年生がふられる。



「あの……1年B組の冬海笙子です。クラリネット…です」

恥ずかしそうに顔を赤らめる仕草がなんともかわいい1年生。



「1年A組 志水桂一です……専攻はチェロです」

一言で形容するなら天使、な金髪ふわふわ美少年。チェロ、かぁ…。



「3年B組 火原和樹 専攻はトランペットです。ヨロシクね」

そう、笑ったのは屋上で会ったトランペットの先輩。



「同じくB組の柚木梓馬です。専攻はフルートです」

キラキラとほほ笑む彼に、深いデジャブを覚える。


「2年A組 月森蓮 専攻はヴァイオリン」

簡潔すぎて、愛想の一切ない挨拶。少しは笑おうよ。


私に順番が回ってきた。



「2年5組 神田飛鳥です。
 普通科なので専攻、というわけではありませんが、
 ピアノで参加します。よろしくお願いします。」


火原先輩があの時の!と声をあげ
柚木先輩は、人知れず目を細め
志水くんが、ふわっと頭に?マークを浮かべる。


私が小さく頭を下げたら、

次は、もうひとりの普通科生が自己紹介をはじめる。



「2年2組 日野香穂子 ヴァイオリン……」


少し青ざめた顔でそれだけを告げた。

さっきの音で、ヴァイオリン…?
まともに弾けるの?この子…。


私の疑問も金澤先生の声に遮られる。


「おーし。以上7人だな。
 
 日程など詳細はまた後日知らせるが、
 コンクールは数回のセレクションに分けて行われる。
 各セレクションごとに順位をつけ
 最終的に総合優勝者を決めるってしくみだ。

 選曲は自由だが、各セレクションでは
 共通のテーマが与えられる。

 そのテーマをふまえた選曲と、曲の解釈が
 重要だということを覚えておいてくれ。


 しかしだなぁ…。順位云々の前に
 音楽に対する理解を深め、

 そして
 第一に楽しむことを忘れないでコンクールに挑んでほしい。





 …………っと、校長が言ってたぞ」


「「えっ?校長?!」」


いい話だと思わず聞きいってただけに、
ツッコミが火原先輩と重なった。




「そういうわけで、よろしく頼むわ。
 じゃっ、今日はこれで終了。帰っていいぞー」


金澤先生の一言に、みんなわらわらと大会議室をでていく。




にこっとこっちに笑いかけた柚木先輩が
すれ違いざまに、耳打ちをしてきた。




「今日の放課後、音楽棟屋上。絶対来いよ」





寄せた唇をはなし、もう一度ほほ笑んだその顔に

さきほど感じたデジャブの正体がわかった。










((やっぱり、そうか。))

(彼女は…)

(彼は…)

(あの時の………)


2013.05.29