アナタノオト | ナノ



05





「ここで、あってるよなぁ…」


風が気持ちい、昼下がり。


あのあと友達に聞いたら

フェ―タとはこの学院に伝わる伝説の妖精らしい。


あの先生、まじめに言ってんのかなぁ……。


このご時世、妖精って……。



柵に体を預け、空を見ていると

後方から盛大なペットの音がした。



「……っっ!!?人いたの!?」




気持ち良さそうに伸びる音。


メンデルスゾーン…


表現にムラはあるものの豪快で快活な演奏。



どんな人が吹いてるのか気になって
ドアの上にのぼってタンクの裏から覗いてみる。



「わぁ…また随分と体育会系な…」


緑色が映える髪にほどよくついた筋肉。
音楽科には珍しいタイプだ。


楽しそうに自分の世界観を形成している。



最後の一音まで自由に吹きあげ
大きく息をはく奏者。



「双頭の鷲の元に…ですか」



「……えっ…ふぇ……!!!いつからいたのっ!?」




慌てふためいて、思わずペットを落としそうになった。



そんな集中してたのか…。


「ってか、普通科…?どうしてこんなところに?」

「いやぁ、金澤先生にここに来いって言われて…
 そうしたらトランペットが聞こえたので
 どんな人が吹いてるのかなぁ、と思いまして…」


「あっ…ってことはもう放課後?」

「はい…一応」

「マジかっ!ヤバい急がなきゃ!!
 柚木待たせちゃう!」



なんとも忙しく楽器を片し、屋上を出ていく先輩。




「じゃぁね!」


最後に手を振って、階段を駆け下りていく。





(不思議な先輩だ…)
(ってか、あの先輩が金澤先生の言ってた妖精…?)

(ふふふ…みつけたのだ!!)



13.05.29