11.射の話。
宮地の射って、きれいだよね。
五月の風が暖かく吹き抜ける道場で、
唐突に呟いたのは、神田。
いま、的前に立っている宮地と犬飼を見比べて思ったんだろう。
「どうしたんだよ、いきなり」
「いやぁ…なんか教本通りって言うか、
微動だにしないって言うか…」
「よろしくおねがいします」
外に着替えに言っていた夜久が帰ってきた。
「月ちゃん!」
がばっと抱きつく神田に、受け止める夜久。
…………なんか、女子って花だよな。
そんな俺の心の声なんか聞こえているはずもなく、二人は満面の笑み。
「いらっしゃい、飛鳥ちゃん。何の話、してたの?」
「ん?…宮地の射ってキレイだよねって話」
「あぁ、それわかるかも。なんかこう…力強いって言うか…」
「そうそう!けど、なぁ…」
「けど、なんだ。神田」
「「「宮地(くん)!!」」」
引き終わった宮地が射場から出てきた。
「白鳥、雑談をしてないで引け!」
「えっ!俺だけ!!??」
「うるせぇ〜ぞ、白鳥ぃ。さっさと引いてこい。
お前、今日ほとんど引いてねぇだろ」
「そういう犬飼だって、あんま引いてねぇだろ!」
「なぁなぁ、飛鳥。俺の射は?」
誤魔化すように、犬飼。
「ん〜、、、タカの射?どう思う?月ちゃん」
「えっ!犬飼くんの射?……そうだなぁ」
「適当……じゃないか?」
いつもなら無駄話をするな!と怒る宮地でさえ話に加わっている。
「ひどっ!俺だってちゃんと考えて引いてるんだぞ!」
「そうには見えないから言ってんじゃん」
「飛鳥まで!!!!」
仲良さげな言い合い。
こいつら、クラス一緒だもんな。
ちゃっかり名前で呼び合っちゃってるし。
「んっで、月ちゃんは可憐!」
「まぁ、それはいい当ててるな」
「そんなことないよぉ!」
「いやいやあるって。…じゃぁ、小熊は?」
「ぼ…僕ですか!?」
「小熊くんは……あれだ。華奢」
「きゃ…華奢……((ショック」
「細くて、しっとりしてて……大正の女学生みたい」
…神田。
仮にもこいつ男だぞ。
女学生と言われた瞬間、目に見えて小熊は沈んだ。
「じゃぁ…俺は?」
11.射の話
「白鳥?」
「おぅ!」
「白鳥は……」
俺は…?
「がさつで…大雑把で、呼吸とか全然気にしてなさそうだけど…」
あれ?俺、貶されてしかない…?
「けど…
一番純粋で、好きかなぁ 」
そんな些細な一言で、
こんなにも暖かくなるなんて、
きっとこいつに会わなかったら
知らなかったと思う。
110921
アレ…話がまとまんなかった。
元ネタは部活中の会話です。
誰が一番きれいかって…
そりゃぁ梓でしょ。
もうちょっとで入部すると思います。
←|■|→