はろ、はぴ | ナノ



10.仲、いいんだね。





「わぁ、すげぇ…」


そう、歓声をあげたのは誰だったか…。





五月に差し掛かった今日は、生徒会主催の星見会の日だ。


新入生歓迎も兼ねて、今年度初めての星見会。

いつも以上に気合が入っている。


『じゃぁ、みんな楽しむように!』


開会のあいさつがスピーカーを通して伝わってきた。

また今日も、会長は元気なこと。



そんなことを思いながら私も空を仰ぐ。


視界いっぱいに広がる星空は、宝石箱のよう。

周りに感じる多くの生徒の声。

どれも楽しそうで。

この一瞬がかけがえな、大切な、記憶なんだ。



毎日見ているはずの星空なのに、思わず感傷じみてしまった。



「飛鳥、楽しんでる?」

不意に背中に重みがかかり、耳元で聞きなれた声がした。


「翼。重い。どいて」

自分よりはるかに背の高い彼に抱きつかれると骨が軋むんだ。

ホント、少しは加減してほしい。


「ぬーー。なんでぇーー!」

「こら!翼、何やってんだ!」

不満そうな声をあげる翼の後ろからもうひとつ声がした。


「すみません、先輩。ほら、翼も謝れ!お前が抱きついたら先輩がつぶれるだろ!」

「ごめんちゃ〜い。」

「大丈夫だから。少年もありがとね。翼のお友達?」


翼を止めてくれた美少年にあらためてお礼を言う。

いやぁ…随分とまたキレイな男の子だなぁ…。


「翼の従兄弟、宇宙科1年の木ノ瀬梓です。はじめまして、飛鳥先輩」

「はじめまして、木ノ瀬くん」

なんで私の名前を知っているのかはつっこめなかった。

だって、笑顔がコワイだもん!


「え〜、翼みたいに僕も名前で読んでくださいよ〜」

「改めてさっきはありがとね、木ノ瀬」

「なんか、降格してない?僕」

「梓、気にしちゃいけないんだぞ!そんなんだから背が伸びないんだ!」

「背は関係ないだろ、バカ翼!」


空を見上げる私を挟んで言い合いを続ける二人。





10.仲、いいんだね。




「当たり前なのだ!」

「世話係なので。」


少し照れたようにそっぽむく木ノ瀬くん。


この後彼とまた会うなんて、まだ誰も知らない。





110906

梓、ですね。
翼もです。

これであとでてないのが
春組だけになった。