『石頭』
「は、走る骸骨ってのも綾部だったりしないか……?」
「失礼だな園崎、俺だって流石に骸骨にはなれないぜ!」
「お前も骸骨にしてやろうか? いいから黙れよオラ。耳澄ませろ馬鹿」
怖さ故にか口数が多くなる春樹と綾部に、丁が怒り気味に言う。二人はしぶしぶ音のする方へ向き直った。
足音が近付いてくる。影から白い足、続いて腕、そして、顔が見えてくる。その顔は、模型でもない、人の骨そのものであった。
「ウボァー!!」
急に大声を上げて叫んだ春樹が、傍にあった自動販売機に頭から飛び込んだ。自動販売機のサンプル窓はあっさり割れて、春樹の頭は自動販売機の中へ、消えた。
「もう……本当に怖がりなんだから……ふんぬらば!」
「なあ、あれ……《ヒトならざる者》じゃないか?」
「えっ、じゃあ、幽霊じゃないの?」
「ああ……普通に化け物ばい」
ヒロは骸骨について感じた事を口に出した。すぐさま仮令が解析する。どうやら幽霊ではないらしい。ちなみに自動販売機に刺さった春樹は翼が引っこ抜いた。
「そうか……幽霊じゃないのか……」
「覚悟してもらうぞ……」
春樹がゆらりと骸骨へ近付き、刀を抜く。そこにティーアも加わり、ジャマダハルを持った腕でシャドウボクシングをする。
「あっ、ちょっ、二人とも!?」
仮令の制止を振り切って二人は骸骨へ斬りかかった。
*
「……あれは本当に酷かった。現代の地獄絵図」
結論から言えば、走る骸骨もとい化け物は、あまり強くはなかった。だが春樹とティーアは容赦しなかった。無慈悲だった。
既に動けなくなった相手に向かって何度も何度も攻撃を繰り返し、最後には死体を蹴る始末。二人のリンチは化け物が光の粒となって消えるまで続いた。
現在は正座した二人の前に仁王立ちしたシェアスと翼がいて、絶賛説教中である。
「……結局、七不思議は全部嘘っ八か……」
「そういう事になるな。どうするんだ、新聞のネタは?」
「練り直しばい」
「あ、ねえねえ結城君、そろそろ帰ろうよ」
丁度説教を終えたシェアス達が戻って来た。この場所にとどまる理由もないので、一行は昇降口へと歩みを進めた。