『怒り』
綾部を散々叩いた後、次の七不思議を確認する。
「で、次は?」
「次は……『屋上の歌姫』ばい!」
仮令の言葉に硬直したのはシェアスとティーア。
その瞬間を見逃さなかった千秋が二人を睨む。
「何か?」
千秋が睨んできて、シェアスはピクリと肩を揺らす。
ティーアは動じずため息を吐いた後、「別に何も」と言って仮令を見る。
「屋上の歌姫の件に関しては七不思議に関係ありません。次行きましょう」
「え、でも」
「次行きましょう」
「あ、はい」
と言って強制的に終わらせる。
ティーアの気迫に負けた仮令は「じゃあ次な」と、次の七不思議の場所へ行くことにした。
それが、音楽室だった。ティーアが不思議そうな顔をした後、仮令を睨む。
「まさかあんた。次の怪奇現象の場がここだと仰るんですか」
「そう! これこそが『人食いピアノ!』」
仮令が自信満々にピアノを指差す。
ティーアが再びため息を吐いて、「くだらない」と呟きつつ、グランドピアノをジッと見つめる。
「あんた達もさっさと捜索してください。俺はピアノを確認するんで」
ティーアの注意を受けて、皆丹念に調べ始める。
ティーアはあらゆるところをチェックしてピアノの鍵盤にも触れる。
「音が変わってないか……ついでに少し弾いてみるか」
そう言ってティーアは、ポーンとピアノを鳴らす。
ティーアの呟きが聞こえてたので他のメンバーも気にしなかった。
しばらくティーアが弾いているうちに、シェアスとイリス以外の皆がピアノの近くによってきた。
その瞬間、ガタンとピアノの蓋が閉じてティーアの手が挟まる。
「いたっ!」
思わぬ痛みにティーアが必死に手を出す。
その声に反応したシェアスとイリスがたたっと駆け寄ってきた。
「どしたの!?」
「急にピアノの蓋が……」
「なるほど……これが人食いピアノの正体!」
「じょ、じょじょじょ、冗談だろ!?」
皆が次々と七不思議を話題に出すと、「いや……」と言いながら仮令がそーっと手を上げる。
「お、俺が、ピアノの蓋に当たっちゃって…」
その言葉に、沈黙した後。
ティーアが魔法陣を出し、そこからジャマダハルを取り出した。
そして、今までで一度も聞いたことのない彼の叫び。
「てめえかピアノを七不思議に仕立てあげた犯人はあああああ!!!!!!」
「ふ、不可抗力ばい!!!!!!!」
ティーアの怒りは、想像以上に恐ろしかった。