07
「なんやとぉ!?」
「なによ!!」
女に対して胸倉をつかんできた勝呂にあたしは睨みながら反抗の意思として声を荒げそういった。
強面な勝呂は睨むと迫力のある顔が歪んでさらに迫力を増す。
あたしはそれに負けじと睨み返した。
発端は、テストの点数だった。
テストで今回百点を取った勝呂にあたしは聞こえよがしにばかばかしいと吐き捨てたのだ。
テストでどんなにいい成績をとったって、実戦で役に立たなければ意味はない、と。
そしていい合いをするうち、胸倉をつかまれた。
「おい、やめろ!」
胸倉をつかむ手を引き剥がそうと奥村燐が勝呂の腕に手をかける。
しかしそれは払われておしまいだった。別に助けてもらう必要はないが。
「坊、あきませんて女の子に。」
次は志摩が出てきた。相変わらずへらへらとして顔の表情筋が緩みまくっている。
そんな志摩の言葉に勝呂の力が幾分か弱まった。
ムカッときた。女だからという理由で手加減されるなんて。
「女だからって、手加減すんの!!?」
そういって、ドン、と勝呂を押した。
勝呂は案外あっけなく離れた。これくらいだったら、男子の体はびくともしないはずなのに離れるということは勝呂はやはり手加減をしていたということだった。
しかしそれはあたしが女だからということで。女の自分が嫌になる。
勝呂はあたしが押したとき目を見開いて驚いていたが、すぐにその目を怒らせてまた反撃しようと口を開いた。
と、そこに。
「なにやってるの。」
普通の声なのに、教室によく響いた。
そこにはナマエ先生がいた。教室の入り口にドアノブに手をかけたまま立っている。
先生は、眉間にしわを寄せてこちらを見つめている。怒っているようにも見えるのに悲しんでいるようにも見えた。
「ケンカしてるの?」
歩いて、あたしと勝呂のところに来ると先生は、あたしと勝呂を交互に一度見た。
「「・・・・・・・・」」
あたしたちは黙った。先生は怒っていたのではなく、悲しそうで申し訳ない気持ちになったからだ。
「どうしてケンカしたの。」
「「・・・・・・・・・」」」
先生の声は低く、悲しそうな顔をしている割には怒っていた。どっちなんだいったい。ちぐはぐだ。
だまり続けていたあたしたちに、先生のお説教が始まった。
「奥村先生に言われなかった?祓魔師は二人以上のパーティで戦うって。」
先生はあきれたように、はぁ、とも、ふぅ、ともつかぬため息を吐き出す。
「任務をスムーズに、且つ安全に取り組むために仲良くするのは必要不可欠なことなのよ。祓魔師同士の仲がよくないせいで最悪命を落とすこともあるの。」
先生の一言一言がぐさりと刺さる。
思わずうつむけば、「顔を上げなさい。」と厳しい声で言われた。
「・・・・つまらない意地と自尊心は捨てなさい。競い合って高めあうのは結構。だけどお互いの足を引っ張りあうような真似だけは許しません。」
以上。腕を組んでいた手を気をつけの位置に戻した先生はそういうとあたしたちに優しい笑みを向けた。
怒ったあとに笑顔を向けられるとは思わなかったため、少し驚く。
「わかった?」
先ほどまでとは打って変わって柔らかい口調となった先生の声につられるようにしてあたしたちは声をそろえて「はい。」と返事をした。
つかみづらい先生
(わ、悪かったわね。)
(・・・・お前、いきなりどうしたんや。)
(っ・・・う、うるさい!!)