08
「・・・・・一ヶ月、ですか。」
「ハイ。おそらくそれ以上になるでしょう。」
彼女が京都へと行くこととなったのは私がそう仕向けたからだった。
彼女は一ヶ月という期間の長さに声を硬くしていた。なぜそんなに長いのだとでも思っているのだろう。実際はもっと長くいてほしいくらいだがさすがに彼女を説得するのは難しくなってしまうだろう。
「これもあなたのためなのです。」
机に両肘を突き、手を組みながら彼女に言えば彼女は一瞬怪訝そうな顔をした後、はっとした顔になりすぐに無表情になる。
「そんな心配必要ないのですが。」
眉を盛大にしかめられそういわれると彼女には本当に必要なさそうだ。
が、これも彼女の心身の安全のため。そして私のためでもあるので彼女には京都へ行き、身も心も休めてほしい。
強引であるが、私は彼女の弱点をついた。
「もしかすると、久しぶりにお会いしたシュラさんと離れるのが嫌ですか?」
からかうように言うと彼女が剥きになっていいえと返すのが分かっていて私はわざとそういった。
時期はできるだけ早いほうがいい。
彼女は今、騎士団内でのたち位置が危うくなりつつある。
それは各地で彼女が手柄を立てすぎてきたせいであった。
今は彼女の行動を抑えるためにここにいさせているがここいは奥村燐がいるためまた彼女は異動せざるをえなくなる。
その命令はいずれ必ず来る。だからその前に彼女を移動させようと考えたのだ。
そうすれば余計な手間も省ける。
彼女をからかうように見つめながら頭を回転させていると彼女は無表情に
「いいえ。」
と答えた。
「そうですか。ではよろしいですね?」
「・・・・はい。」
仕向けたとおりの答えに私はにんまりと笑みを見せた。
彼女が私の表情をいぶかしげに見つめている間に私はさらに笑みを深め、ぱちんと指を鳴らした。
彼女のいぶかしげな表情が一層深まる。そんな彼女に私はおどけて言った。
「京都への異動は、明後日です。明日はお休みを与えますからきちんと支度をするように。」
「・・・・は?」
彼女は彼女らしくない、少し間の抜けた顔で私を見つめていた。
ぱちぱちと目をしばたたかせる姿は実に愛らしい。
彼女を弄び動揺させることが私は大好きなのです。
玩具箱の新たなおもちゃ
(始めてあったときの貴女は、とても可憐な少女でした。)
(貴女というおもちゃはいかに私を楽しませてくれるか、)
(楽しみです。)