Blue Exorcist | ナノ



20

「そういえば、いい忘れていましたね。おかえりなさい。」


メフィストの言った言葉に私は思わず「あ」と声を上げた。正十字学園に到着して、私はメフィストに何の挨拶もせず、シュラのもとへ一目散に駆け出したのだ。


「ああ、別に嫌味などではありません。あなたが私をいくら無下にしようと、私はまったく気にしておりませんから、あなたもお気になさらず。」


感情が読み取れないように表面に笑みを押し出してメフィストはいった。その割には言葉の端々がとげとげしかったが。


「すいません。」


さして申し訳なさをこめずに謝れば、メフィストはピクリと眉を動かした。
気にしてるなら、気にしてるって言えばいいのに。


「・・・まあいいでしょう。」


メフィストはひとつため息をつく。私の態度にあきれたようだ。


「それよりも、本題に入りましょう。あなたが上一級を目指すことについてです。」


「はい。飛び級ですが大丈夫だと思います。知識と技量はあるつもりですから。」


「私もあまり心配はしていません。・・・ただ、あなたの言う"知識"は心配するべき点です。」


そういってメフィストは一枚の紙を取り出した。赤い丸や、赤いバツがついている。そして黒いふちで囲まれた枠が右上、それから中央に大きくある。右上に囲まれた枠には、数字が書いてあった。・・・16点。100点満点のテスト用紙。もちろん私のものだ。


「あなたの学生時代の成績を調べさせていただきました。」


私はむっと口を尖らせた。メフィストが心の中で鼻で笑っている気がする。


「・・・悲惨、ですねえ。」


「・・・・」


「まあ、これはあなただけではありません。なぜかわかりませんが毎回ひとつの学年に一人はこんな生徒がいました。」


メフィストはテスト用紙を私の前に差し出す。


「しかし、今は塾生を教えられるだけの知識などは持っているつもりです。」


「ああ、それは私の耳にも入っています。短期間で生徒の人気を得るほど教え方が上手だとか。」


「・・・・」


「しかしですねえ。上一級は今あなたが教えている塾生レベルではありません。もう一度見直す必要があるとは思われませんか?」


さらにメフィストはテスト用紙を私に近づけた。


「・・・そうですね。」


言い返す言葉など見つからず、棒読みで私はしぶしぶ答える。学生時代の成績がこんなに悲惨なものなのだから仕方がない。


「ということで、あなたは上一級を取得するまで、奥村燐たちと塾で学びなおしてもらいます。もちろん、彼らの現在受けている授業は、あなたは十分な知識を持っているようですから、彼らが学ぶときはサポートを。その先の内容は奥村雪男から個人的に教えてもらうように。」


指をぱちんと鳴らすメフィスト。


「いかがですか?」


私は彼の屈託のないたくらみ顔に負けた。


「・・・わかりました。」


メフィストは満足気にふふんと鼻をならした。


「あ、ですがあなたは奥村雪男の対悪魔薬学と足立先生の悪魔歴史学が苦手なようですね。それだけは塾生たちと一緒に受けるように。」


「・・・はい。」










「―――皆さんお久しぶりです。」


と、私は塾生たちに挨拶をした。それぞれの顔に驚きが浮かぶ。宝君は別だけど。


「早めに戻ってくることができました。えっと、これから私は上一級取得を目指すために皆さんのサポートをしたり、一緒に勉強をしたりすると思いますのでよろしくお願いします。」


驚きの顔が浮かんだままの彼らに私は頭を軽く下げた。


「じゃあ、なまえさんは後ろのほうの席へ。」


奥村先生の指示されるまま私は後ろの席へと座った。そういえば、雪男くんと呼んだほうがよいのだろうか、それとも奥村先生でいいのだろうか。そこは彼と確認しておこう。

隣の席には誰もいないので広々としたスペースに教科書類を広げる。今から雪男くんの対悪魔薬学の授業だ。

長い年季の入った木の机をなでながら、遠い昔のような思い出を思い出していると、雪男君の「教科書の〜・・・」という声が聞こえたので指定されたページを開いた。

メフィストから支給された教科書だ。新しい見た目と質感のそれを開く。以前使っていたものはどうしたのだったか。

それはさておき、私は授業に集中した。以前は眠たくなるような声の先生が担当だったから成績が悪かっただけで、今は雪男くんという対悪魔薬学の天才がいるから大丈夫だ。

それに、シュラと約束した。

そのためにも、頑張らなくては。

後ろで一つに束ねた髪を束ね直したあと、私は腕まくりした。


昇級へ向けて


((なんか、前よりも覚えること増えた気がする・・・))

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