09
「あれ、ナマエ先生やないですか。」
ごろごろと少し小さめのスーツケースを転がしているナマエ先生をみつけた。
「あれ、三輪君じゃないの。」
一つに束ねたさらさらな黒髪を揺らしながらこちらへと向かってくる先生の顔は少し意外そうな顔だ。
「どこかいかはるんですか?」
そうきくと先生は「ちょっとね。」と苦笑した。
「一ヶ月ほど京都に。」
先生の言葉の雰囲気から、こういうことに先生はなれていると感じられた。
「みんなには言わへんのですか?」
僕はそれが不思議で聞いた。
先生は困ったように笑う。先生はいろんな笑顔を見せるなと思った。
「たった数日悪魔祓いを教えただけだから。」
そうは言うものの、みんな先生の教え方が分かりやすく先生を好いていた。
もちろん僕も先生の教え方が好きだった。
だから僕は「それでも、」と口を開いた。
「いわはったほうがええですよ。みんな先生を好いてましたし。」
先生は少し「うーん・・・」と逡巡した。しかし導き出された答えは、
「それなら三輪君から言っておいて。」
僕からみんなに伝えろということだった。
「えっ、」
僕は戸惑った。先生はみんなに挨拶する気はさらさらないらしい。
僕には先生が面倒ごとを避けたいように思えた。
どうして、と聞きたかったがその前に先生は「ああ、もう時間だ。」と腕時計を見ながら言った。
「じゃあ、私はもういくから。三輪君みんなによろしく伝えておいて。」
それじゃあ、また。
そういってにっこりと綺麗な笑みを僕に向けた後先生はごろごろとスーツケースを転がして去っていった。
去っていく姿には何の未練もなかった。
淡白な人(ナマエ先生、どうやら一ヶ月京都にいくらしいです。)
(えっ、ほんまに!?)
(マジかよ!)
(うそっ。)
(ほんまか!)
(どうして?)