1日休みをもらいたい、とキラが言ったそうだ。
科学班一同はもちろん奴の願い出に驚き阿鼻叫喚したという。期待の新人と名高い奴は、現れた初日から科学班の救いであったのだ。キラの素顔が明らかになった後などは特に、彼女を女神だ天使だと崇め、奴の仕事ぶりを天からの恩恵だとありがたがるほどであった。これは冗談でもなんでもなく事実である。
キラは来週の日曜日に休みを勝ち取った。コムイがきちんと決定したそうだ。キラが休みたいと言った途端に科学班員が休まないでくれとキラにすがりつくので落ち着いた話ができず、わざわざ場所を変えてまでして休みを勝ち取る話し合いをしたらしい。
「仕事が天職だって言ってたのにいい〜」
これはジョニーである。キラの休み発言によって最も大きなダメージを受けたのはこの男であった。月に一度は倒れるジョニーにとってキラの登場ほど、救いだったものはなかったのだろう。奴はあらゆる分野に精通しているのでどんな科学班員でも手伝えるという特技があった。
ちなみに俺がキラの休み発言のことを知ったのはジョニーからである。
「はあ・・・そういえばキラも成長したって言ってたな・・・」
現在、自分の団服の採寸のために俺はジョニーの元へ訪れていた。キラが来てからはそこまでやつれた表情ではなかったが、精神的な側面によるものか、元どおりである。
「あいつ、何歳だ?」
気になったので聞いてみた。
「14歳だよ。天才だよね。」
「・・・・」
俺よりも若いとは思っていたが、実際に年齢を聞くとやはり驚かされる。
「小さい頃に両親がAKUMAに殺されたらしくて、それから協力者が運営する施設で育ったらしいんだ。小さい頃から母国語のロシア語以外も流暢に喋れたりとかとにかく天才だったみたい。」
ジョニーはキラの素晴らしさを語りたいのか、聞かずともベラベラとキラの情報を喋っていく。
「ほんとすごいよね。自分で本を読んでいろんなことを全部習得していったみたいで。記憶力なんてすごいなんてものじゃないよ。キラが何か忘れたところなんて見たことないよ。仕事も抜け目ないし。」
「おい、採寸の手、止まってる。」
「あ、ごめん!」
俺は小さくため息をついた。キラは何もせずに周囲からの信頼と尊敬を集めてしまったようだ。
「はい、おしまい。」
ジョニーは採寸した情報を手近にあった紙に擲り書きをした後、俺にもう行ってもいいと許可を出した。
「できたらすぐ渡すね。」
「ああ。」
「にしても、キラが休むなんてなあ・・・」
結局そこに戻るのかよ。
俺には関係ないことなので何も言わず俺は科学班から去った。ひとつ気がかりだったのは、ジョニーの声が聞こえているはずだったのにいつもは何か口を挟んできそうなキラが口を挟まず一心に仕事に熱中していることだった。
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