腕の中に、キラがいる。
少し身じろぎするだけで、月のように白い肌がやわらかい肉感とすべらかさをその温度と共に俺の肌に伝えて、満ちたと思った欲望がまだ満ちていなかったことを思い知らされる。きっと、ずっと、満ち欠けを繰り返す月のように、俺はキラを求めてやまない。
「あなたのせいで、私の1日のスケジュールは狂ってばかりです」
キラが眠たそうに言いながら俺の体に、肌をすり寄せる。温かさを求める猫のように、良い位置を頬ずりをしながら探す。その行動が俺の欲望を高めることを知らないのか。
行為を終えたあとのキラは一層の信頼を俺に向けていた。俺とキラは、心と体を文字通り繋げ、絆を強くしていた。
「はっ、それじゃあ、俺はお邪魔ってわけだな」
キラの言葉に冗談めかして返す。
「そうは言っていません」
キラは俺が気を悪くしていないとわかってか、小さく笑う。
「このくらい、私はカバーできます」
いつものような淡々とした声だが、少しだけ力強い。
俺の腕の中で、不安を垣間見せないキラをみると、どうしてか俺も和らぐ。
しばらくぽつりぽつりと睦言を交わすと、いつの間にかキラは寝入った。
明け方のことである。
窓からうっすらと薄青を感じる。もう少しすれば光が差し込み始めるだろう。
まだまだ続く戦争も、今朝の俺たちに注ぐ平和の光だけは妨げられない。キラにとって、今日はきっと、また新たな心持ちで始まる。
日差しが差し込み、眠れなくなる前に、俺はゆったりと、まぶたを下ろす。
キラがいつものように起きて、また、仕事を始めるまでの数時間のつかの間が永遠に続けばいいのにと願いながら、キラと同じまどろみに支配を譲った。
- 26 -[*前] | [次#]
top main novel top