追憶の錬金術師 | ナノ


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傷の男が逃げてしまった後、僕らは東方司令部に戻った。僕はなかなか収まらない頭痛が吐き気を引き起こし、東方司令部のソファにねっ転がらせてもらいながら話を聞いた。

「ケイトはこれからどうする?」

話があらかた終わって、それからエドワードはアームストロング少佐とリゼンブールに機械鎧を直しに行くことになった後、大佐が僕に尋ねた。一応僕にも護衛が必要らしい。

「僕は・・・ダブリスに行きたい。」

力なく答える。吐き気は収まってだいぶ頭痛も軽くなったけど、そのせいでだいぶ体力が尽きてしまっていた。それに、頭もぼーっとする。

「誰か護衛できる人いたかしら。」

リザさんが僕を心配しながらみんなを見渡す。ここには傷の男から護衛できてさらに暇なのはアームストロング少佐しかいない。

「僕、一人でいい。一回傷の男とやりあってるし、急ぎじゃないから目立たないように動く。」

「今、吐き気するほど頭痛に苦しんでたのはどこのどいつだ。」

大佐が僕の方に来て拳を僕のひたいに軽くぶつけた。お叱りのげんこつのつもりらしい。

「この頭痛は、そんなそうそうなるもんじゃないよ。」

だるいなあと思いながら、僕は目をつぶる。少し眠くなってきていた。

「おい、寝るな。・・・急ぎじゃないなら、護衛が用意できるまで鋼の達と一緒に行動するといい。」

「うーん・・・」

「起きろ。でないと勝手にそうするぞ。」

「うん・・・」

「だから寝るな!」

僕は疲れた体を起こして、少し伸びをした。

「・・・なんの話だっけ。」

「・・・・もういい。お前は鋼の達と一緒に行動しろ。」

「え、なんで。」

「なんででもだ!」

なぜか僕は大佐に怒られ、無理矢理エドワード達と旅を一緒にすることになった。


*


ヒューズ中佐に送られて、僕とエドワードたちはリゼンブールへと行くことになった。
リゼンブールへ出発する朝は、なんだか清々しい気持ちだった。

「機械鎧直すんだったら、また僕の錬金術見してやるよ。」

ぎゅうぎゅうで苦しいエドワードとは対照的に僕は二人分の席を一人で独占しているので、そこに寝っ転がりながら言った。

「機械鎧とお前がなんで結びつくんだよ。」

「機械鎧の接続のときに、痛いだろ?望むんであればそれをカットしてやれるんだよ、僕は。」

「へー・・・」

「あ、でもエドワードは痛み必要そうだな。」

「なんでだよ。」

「元の体に戻らなきゃって、確認できるだろ?」

「・・・・」

エドワードは、目を見開いていた。何に驚いたというのだろう。

「お前も、もしかしてそうなのか。」

「は・・・?」

「だから、昨日のお前の頭痛も、同じなのかって。」

「なんのことだよ?」

「お前昨日ははきそ」

「ドクター・マルコー!」

そのとき、急にアームストロング少佐が窓に身を乗り出した。巨体が急に動くと僕もエドワードもびっくりだった。
少佐が口にした名前にも僕はびっくりして、ついつい少佐の視線のさきを追う。その視線のさきにいたのはたった一人。初老の厳格そうにも優しそうにも見える顔の男性だった。
あの人が、マルコー・・・。
僕は素早く起き上がって、列車から降りることにした。

「ごめん、僕ここで降りる。」

「どこへ行く!」

「少佐達、先行きなよ。僕はあの人に興味がある。」

「いや、俺らも降りる。」

「あっそ。」

列車をおりてマルコーさんを探した。ごたごたした後、僕らはマルコーさんの家に上がった。
今回もやっぱりエドワードが順番は先だった。でも、後になって考えればその方が好都合だったと言える。エドワードは僕と違って賢者の石の生成方法知らなかったのだし。

「エドワードたちはさきに行っといて。僕はマルコーさんと二人っきりで話したい。」

エドワード達の話が終わって、僕は一人残った。マルコーさんには賢者の石ではなく、聞きたいことがあった。

「・・・まだ、なにかあるのか。」

うんざりした様子のマルコーさんに、僕は錬成陣を使って、一人の男を水で表した。

「この人、知ってますよね。」

「・・・!!」

片腕をなくしボロボロの軍服をきた、一人の男である。

「僕は、殺人未遂事件を犯したある元国家錬金術師からこの男について知りました。彼はあなたと共に賢者の石を作らされていたと僕は聞いています。」

「・・・そうだ。」

「作らされたというのは、軍にですよね?しかし賢者の石の生成方法だなんて、人間が研究したとすると、いつになっても完成するとは思えない。ましてやこの時代であればなおさら。そんな高度な錬金術、誰から生成方法を教わったんですか?」

「君は、自分の身が危うくなると承知して聞いているのか?」

「前にも、同じことを言われました。聞けば、生きてはいられないと。」

「ならばなぜ、聞くんだ。」

「僕は自分の記憶を取り戻す研究をしながら、ずっと別のものを追いかけているんです。それが、ここに隠されているような気がしてならない。賢者の石を手に入れるのではなくて、僕にはその先が必要なんです。」

「・・・・・」

マルコーさんは、意思のかたい人だ。さっきのエドワードの言葉にもびくともしなかったほどだし。

「君は、賢者の石の生成方を知っているか。」

「材料だけなら。」

「・・・これを、あの少年に渡して欲しい。私が研究書を隠した場所だ。力を合わせるといい。この生成方の先にあるものが君の求めるものだろう。そして、できれば・・・」

真実の奥のさらなる真実へたどり着いてほしい。か細いながらも切に願う声に、僕はまた、軍の秘密にかかわる何かがあるのだと察した。

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