追憶の錬金術師 | ナノ


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3年前のことを思い出していると、ついつい食事の手は疎かになっていた。
一口をよく噛んでしまい、僕はもともとあった食事の半分くらいですぐにお腹がふくれてくる。一口分を口に運ぶペースが落ちてくると、それに目敏く気がついたのはエドだった。こういう時、いつもは母さんが気がつくのだけれど。

「調子悪いのか?あんま食欲なさそうだな。」

「いや、ただもうお腹がいっぱいになってさ。」

苦笑いする僕を、母さんが心配そうに見つめる。

「やっぱりケイト、食細くなってるでしょ。」

「そうかな。」

絶対にそうだとしきりに言う母さんの言葉を、エドが補強する。

「そういや、前一緒に晩飯食べたときは 、かきこんだりするぐらい食べれてたのにな。」

エドのその発言は、僕にとっては都合が悪い言葉だった。

「ほら、やっぱり食が細くなってる。何かあったのかい?」

「いや、特には・・・」

母さんは僕を心配し出すと中々止まらないところがあって、国家錬金術師になって旅に出だしてからは、一度心配し出すと質問責めにするのだ。

「隠しても無駄だよ。何かあったのはわかってるんだから。」

その何かまでは考えが及ばないでいてくれて助かった。

「何もないって。ごちそうさま。」

僕は三分の一くらい残っている食事をなんとか胃に流し込み、ごちそうさまをした。もちろん、この質問責めから逃げ出すため。このまま質問され続けていたら、どうなっていたことか。
まだ、言えないのだ。物事にはちゃんと順序ってものがある。

「じゃあ、僕はまた清書に戻るから、じゃっ。」

僕はささっと部屋に引きこもることにした。

「あ、おい。」

そういえばエドに説明するといっていたことを思い出して、僕は「ごめん、また明日な。」と、それを先延ばしにした。



*



翌朝。
僕は開店のためにいつも早起きしている父さんと、そんな父さんのために朝食を作る母さんを呼び止めた。エドはまだ寝静まっている時間。アルは、起きているかもしれない。

「母さん、父さん。話したいことがあるんだ。」

母さんと父さん以外には聞かれないよう、2人をエド達がいる部屋から引き離す。

「こんな朝早く、どうしたの。」

訝しがる2人を前に、僕はしゃんと背筋を伸ばして言った。

「記憶を取り戻しました。」

2人が同時に、目を見開く。唐突な切り出しに整理がつかないのかもしれない。

僕は静かに話の続きを滑りださせた。

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