香る纏う花の色 | ナノ

距離

ディック・・・じゃなくてラビが私に笑顔を見せてくれた時、どうしてだろう、笑顔なのに拒絶された気がした。これ以上近づかせないような何かが隔たって、遠ざかる以外できなくなったと思ったのだ。

それが私の思い過ごしであればいいけれどと思いながら笑みを返して頷く。

「そろそろ、会場に戻るか。」

そういって手を差し伸べる彼の手にそっと手をのせた。何度か触れたことがある彼の手は以前よりもしっかりしていた。

私に歩調を合わせてくれる気遣いに気づいた時はさりげない優しさの欠片を拾い集めている気分だった。以前にも増して愛しいと思った。


歩きながら、彼が言う。

「これからは、ラビとして接してほしい。」

私は思わず足を止める。

「・・・ユリア?」

少し先で振り返る彼の眉が心配そうに下がっていた。ほんの少しつんとした胸を押さえて私は笑顔で答える。

「もちろん。じゃないとみんなおかしいって思うし。わかってるよそんなこと。」

それから私は、今の彼の名を呼んだ。

「ラビ。」

「っ・・・」

「これから、同じエクソシストとしてよろしくね。」

「お、おう・・・」

あっけにとられたように返事を返すラビに、私は精一杯大人ぶった笑みを向けた。


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