香る纏う花の色 | ナノ

私の気持ち

「もしかしたらラビはユリアの家族のこと知ってるかもよ。」

とリナは提案する。

「教団に来る前に仲良くしていたって、ラビが言っていたし。」

"仲良くしていた"という言葉がどこまでのものか私は気になった。初めてラビにあったとき、ラビは私に関してとても取り乱していたし、数か月前のラビが告白をした時、彼は私の記憶が戻ることをひどく望んでいた。ラビは一切私たちの関係を言わないけれど、私たちが恋人だった可能性は高い。

「私とラビって、どれくらい仲が良かったの?」

私はほとんど確認のためにリナに聞いた。彼女は答えるのをためらった後、正直に答えてくれた。

「私が見る限りでは、恋人同士だったと思う。」

リナリーの言い方はまるで彼女が推測しているようだった。

「どういう意味?」

私は彼女に詳しい説明を求めた。

「ユリアが記憶を失う直前に二人はそんな感じだったから。それまでは、普通の仲間同士って感じだったのよ。」

「私はラビのこと何も言わなかったの?」

「言わなかったっていうより聞く機会がなくて。ごめんね、私にわかるのはこのくらいなの。」

「そんな、謝る必要ないよ。」

謝るリナのフォローをして、私は一旦考えた。私とラビは教団に入団する前から交流があって、私が記憶を失う直前に恋人同士になった。それじゃあ、私たちはそれほど深い関係ではなかったことになる。それじゃあ、ラビと初めてあったときの彼の取り乱しようや、ラビがアレンに言った言葉はどうなるのだろう。

「あのね、リナ。」

私はリナにアレンの話をした。ラビが『一緒になることはできないけど、どうしても守りたい子がいる』といった話。その子が私だろうという話。数か月前に好きだと言われて、そのままにしている話。

「ラビにそういわせるほどの何かが私たちにあったんだと思うんだけど、何かわからなくて。リナは何か心当たりある?私どうすればいいかな。」

リナは私のためにゆっくりと考えはじめてくれた。リナみたいに口が堅くて信用できて、それに頼ると一生懸命力になってくれようとする人に話せて、今まで悩んでいた分、幾分か楽になった。

「私は、二人に何があったのかわからないわ。でも、どうすればいいかは答えられる気がする。」

「どうすればいい?」

「ユリアは少し複雑な状況だけど、基本は普通の恋愛と一緒よ。ユリアはラビのことどう思っているの?」

リナは私としっかり目を合わせて聞いた。率直な質問は私にまっすぐ入ってきて、言葉をつっかえさせる。リナは私の答えをしっかりと待っていてくれている。

「よくわかんないよ。」

私のあいまいな答えにリナは先を促した。私は自分が今まで感じてきたことをゆっくりと話す。

ラビに前も今も変わらないところが好きだと言われて、嬉しかったこと。でも仲間としてまずは仲良くしたくてその好きを見てみないふりをしたこと。それからラビが無条件に向けてくれる好意を受け止める自信がなくて、罪悪感を感じていること。アレンの話の時に、ラビが他にいい人を見つけてほしいと思ったけれど、何か心の奥でひっかかっているということ。

こんなにも自分のことをリナにさらけ出したことがなかった気がして、私はとても恥ずかしかった。話すごとに感情が高ぶって、体が熱くなって、悲しくもないのに泣きたくなった。心をさらけ出すのがこんなにも激しいことだとは思わなかった。

「ラビが好きかどうか、ユリアはまだわからないのね。」

リナの要点をついた言葉に私は頷いた。

「焦らなくて大丈夫よ。ラビはユリアが答えを出すまで待ってくれるわ。」

リナはそういって落ち着かせるように私の肩に手を置いた。

「まずはユリアは過去を知らなくちゃ。ラビのことはそれからでも大丈夫よ。」

私はうんと頷いた。リナの優しい言葉の全て、私が欲しかったものみたいに心を落ち着けた。


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