香る纏う花の色 | ナノ

曇りのち

警察に、連続殺人鬼について報告するべきか否かを検討しあった結果、犯人を現行犯で捕らえてから警察へ突き出そうということになった。
博物館でのユリアの態度で、おそらくあの館員は自分の正体が気づかれていることを分かっているはずだ。きっとそれでも、ユリアを襲いにやってくるだろう。

見れば一目で分かることだ。
二人組みで訪れた男女。男は刀という武器を持っていが、女は武器らしい武器など無い。男は戦闘向き、女は戦闘向きではないイノセンスを所持していることは明らかだ。そして、男は女の護衛役としてついてきた、ということも自動的に分かる。
俺があいつであるならば。きっと俺は寝込みを襲うか、ずっと尾行し続け片方がいなくなった隙に手早く終わらせるかするだろう。

ならばユリアをわざと一人にし、館員を待ち伏せるのが得策だろう。ユリアが寝ている間にずっと俺が寝ずに見張り続けるなんて、それにはあと一人交代の要員がいなければ不可能だ。

俺とユリアは、人通りの少ない道を歩いていた。
夜が持つ独特な雰囲気と静けさが漂う道は、あたりも暗いため、聴覚に神経が集中した。
となりのユリアがせわしなく息をしているのが聞こえてくる。その息は震えていた。まだ、任務をはじめて間もないために、緊張しているせいだろうか。もしかすると怯えているのもあるかもしれない。
正直言って、足手まといである。しかし、こいつとの本当にはじめての任務のときにコムイから言われた言葉によって、俺は不思議と苛立たない。何回か任務を重ねて慣れるころまでに足手まといのままだったら見捨てよう、とこいつを見捨てる期限を伸ばしてしまった。

「そういえば、昼間の質問に答えていなかったな。」

そしてまた、俺はこいつを見捨てず、何かを与えようとしている。
そろそろ、作戦を開始する時間が狭っていて、ユリアの緊張と怯えは最高潮にたっしているはずだ。

「俺は、過去事体が大切かどうかなんて考えたことはない。」

「・・・!」

「俺は過去について考えるより、今俺がしたいことをやる。」

言い切って、俺はすぐに別の話題に言葉をつなげた。

「そろそろ、作戦決行だ。」

「・・・はい。」

ちらりとユリアを見ると、その表情からは不安が消えていた。


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