標的
「次の標的はこいつね〜。」
まだ傷も癒えぬ時に主から呼び出された。
任務にしてはまだこの間の任務から日があまりたっていないと思ったがそれほど今は重要な時期なのだろう。
私は主から渡された紙切れに書かれた名前を読み上げた。
"神田ユウ"
たったそれだけ書かれた紙を丁寧に折りたたみ服の中にしまう。
今まで国内での活動が多かったのだが此処最近国外・・・つまりもう半分の国での活動が多くなってきた。
あちらの国では諜報活動を行っていたがついこの間命令が来てイエーガーという男を消した。
主は私の活動を諜報活動から暗殺活動に切り替えたようである。
そしてこの間のイエーガーという男の次が神田ユウという男のようだ。
「んじゃ、よろしく〜。」
「はっ。」
私は頭を深く下げ、床を少しぎしぎしといわせながら部屋を出て行く主の足音をしばらく聞いていた。
そして任務へと向かう計画そして準備を立て、私はまたもう半分の国へと出立した。
ずっともう半分の国と呼んできたが、この国は実は"黒の国"という名である。
もともとこの国はノア様が支配のする領地であったが、隣の大陸からやってきた"黒の教団"というある組織がノア様に対抗し、戦に戦を重ね数百年かけてようやく半分まで勢力を拡大させたという国である。
現在も我がノア国と黒の国は一進一退の攻防を繰り広げており領地の奪い合いを行っている最中である。
この間私が消してきたイエーガーという男はその戦の兵を指揮する大将であったのだ。
そしてこれから消す予定の神田ユウという男は、国の境を守る重要な役目を果たしている男である。
頭の切れる男でイエーガーと連携を取り合い最前線で国を守っている男だ。
なので神田ユウを殺せば、一気にこちらの有利となる。
だからこれはやらなければならない任務なんだ。
なのに。
「命、頂戴するっ・・・!!」
「っ・・・」
どうして。
どうして。
あなたがいるの。
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