あれは冗談だ。俺がいつも騙される側だと思ったら大間違いだぞ
**何があっても守りぬく〜から続いております**
「あの、そろそろお買い物に……っ」 「後で一緒に行ってやる」
デートを早々に切り上げられてアパートに戻ってから、かれこれ30分。 ご立腹のリヴァイさんから逃げまどう事にもいい加減疲れてきて、そう切り出してみれば簡単に一蹴された私はガクリと項垂れていた。
「……そもそもお前、何で俺から逃げてやがる」 「怖い顔で追い掛けてくるからですよ!!」 「俺は元々こういう顔だ。別に怒ってもいない」 「だ、だってさっき確かに、『騙したのか』って、それはもう、曾孫の代まで祟りそうな勢いで怒ってましたし……!!」 「あれは冗談だ。俺がいつも騙される側だと思ったら大間違いだぞ」
別にそんな事思ってはいないが、さっきのリヴァイさんの顔は明らかに冗談じゃなかったはずだ。 それに現在進行系でとっても怒り顔だし……。
「と、とにかく、追い掛けようとするの止めて下さいよ」 「なら、逃げるな。側に来い」
言って、私に向かって伸ばした手をクイクイとしてくるが、依然警戒心MAXの私はキュロットスカートの裾をキュッと掴んでその場に立ち尽くしていた。 強い風がガタガタと窓を揺らす音に呼ばれて窓の方を向いたリヴァイさんの眉が、物憂げに下がった。 再び私に向き直ったリヴァイさんの顔は悲しそうで 、ドクンと私の胸をざわつかせる。
「久し振りにお前と2人で出掛けられるのを、俺は楽しみにしてた」 「あの、私もしてたんですが……」 「限られた時間でも、楽しめればと思っていた」 「全く同意見ですが……」 「そう思うなら、埋め合わせをするべきだろ」 「埋め合わせ??」
リヴァイさん考えが全く読めずにポカンとしていたら、一瞬で間合いを詰められて、(ああ、さっきの鬼ごっこはリヴァイさん、かなり手加減してたんだろうなぁ)なんて考えてる内に、彼の腕の中に閉じ込められていた。
「埋め合わせだ」
てっきりまた、セクハラ紛いな事をしてくるのかと警戒したのに、リヴァイさんの腕は優しく私を包んだままで、放たれた声も優しくて、安心と温もりに絆された心がトロトロと蕩けてしまいそうだ。
「せめてガキ共が帰ってくるまでは、腕の中(ここ)に居ろ」
そんな殺し文句を言われてしまったら、もう何も言えないじゃないか……。 その匂いに、温もりに、感触に、永遠に包まれていたいと、幸せをくれる腕の中で私は叶わぬ夢を見た。
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