短所で長所で個性で特徴


「全く、一時はどうなるかと思ったぞ。リヴァイ。見境なく相手に暴言を吐くのは君の短所だな」

いつになく厳しい顔でエルヴィンが諭すも、リヴァイはフンとふてぶてしい態度を貫いたまま、紅茶を啜っていた。

「暴言じゃねぇよ。素直に思った事を言っただけだ。正直者なのは長所じゃねぇか」

物は言い様だ……とエルヴィンは心労そうに額に手の平を当てて首を振った。

今日の昼間に、兵団のスポンサーでもある貴族の男が本部の視察に来ていた。
訓練に励んでいる兵達を見て男は微笑ましそうに「皆、いい顔をしてる。日々の鍛錬で心身共に磨きあげられてるんだな。良い事だ」
と言い、それをエルヴィンと一緒に聞いていたリヴァイは、冷淡な口調でこう言い放ったのだ。

「そりゃあ、安全な場所から見てるだけなら、さぞかし良い光景に映ってるんだろうな。死と隣り合わせの現状なんて考えた事もねぇんだろう」
「リヴァイ!」

すぐ様エルヴィンが咎めるも、出た言葉は引っ込まず、男はギョッとして顔でリヴァイを見つめていたのだった。


「でも、結局彼はリヴァイの言葉に感銘を受けて、本部内の老朽箇所の修繕費まで出してくれる事になったんでしょ?リヴァイの個性が光ったって事じゃない?」

その後の末路に、ナナバは満足気に頷いてそう言うが、エルヴィンの顔は険しいままだった。

「それは、あの方が少々変わり者だったからで、人に寄ったら激怒されてもおかしくない事だったんだぞ」
「まぁまぁ、エルヴィン。そんな目くじら立てなくてもいいじゃん。それがリヴァイの特徴なんだって」

呑気なハンジの声に、エルヴィンは呆れた溜息を吐き、同調を求める様に、リヴァイの隣に立っていたマホを見遣った。

「マホ。君はどう思う。目上の人間に対するリヴァイの失礼な態度は……」
「えっ!?」

突然に向けられた矛先に、マホは驚いた様子でカップから口を離し、助けを求める様にリヴァイの方を見た。
今現在、自分の態度を注意されてる事が心苦しいのか、リヴァイはバツが悪そうにマホから視線を逸らした。
そんなマホに、エルヴィン、ナナバ、ハンジの視線がビシビシと刺さり、居心地悪そうに「んん……」と、小さく呻いてから、マホは真面目な顔付きで言う。

「短所かもしれないけど、長所でもあると思うし……。リヴァイらしい個性……特徴、になるのかな?きっと、リヴァイだから大丈夫だったんだと思う。リヴァイの言葉は冷たいようだけどとてもあったかいし、私も、そんなリヴァイだから好きなんだろうなって……」
「……マホ。君の惚気を聞きたかったわけじゃないんだが……」
「えっ?」

もういい……と諦めた様子のエルヴィンの側で、クスクスと肩を震わせてハンジとナナバが笑っているのを、不思議そうに見つめるマホ。その隣ではリヴァイが、赤くなった顏を隠す様にして、ティーカップに口を付けるのだった。

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