(おい、あいつだぜ、朱雀四天王の生き残り)
(ああ、裏切り者が出たっていう)
(そいつ含めて4人中3人死んだんだよな)
(事件のこと、上から聞かれてもほとんど喋らないみたいよ)
(覚えて無いんじゃない?)
(さあ、どうだか)
(あのマスクも不気味だよね…)
(噂じゃ事件の時の傷が残ってるらしいですよ)
(ここなら治せるじゃない)
(氷剣の死神…何考えてるかわかんないよな、ああいうやつって)
(いくら裏切り者とは言え、ずっと一緒に戦ってきた仲間を殺すのってどういう気持ちだったんだろうな)
(殺した時点でそいつのこと忘れるんだから、別になんとも無いんじゃね)
(本当は裏切りなんてなくて、あいつが個人的な理由で3人を殺した、とか)
(それひっでぇな)
(周りにいる味方にとっても死神ってか)
(怖いよな)

「あ、クラサメくん!いいところで見つけたよ」
「これは私助かったのかな」
「ひどいなあ、エミナくん。ちょっと飲み物をすすめただけじゃないか」
「君のことだからね、警戒するのも当たり前だよ?」
「この前のことまだ怒ってるのかい?」
「いきなり薬を盛られたら誰だって警戒するわよ。クラサメ君だって君のものには口つけないでしょ」
「そうなんだよ。ひどいよね、クラサメくん。別に全部に薬を混ぜてるわけじゃないのに」
「それには入ってるんだよね」
「さあ、どうかな」
「やれやれ…」
「大体クラサメくん僕にちょっと冷たいよね。僕はこんなに君が好きなのに」
「少し自分の行動を考えてみたら?」
「一回でいいから素直に身体見せてくれないかなあ」
「もしもーし」
「ねぇ、クラサメくん!この後僕の部屋おいでよ!お茶くらい出すよ!」
「…そのがつがつ攻める姿勢、嫌いじゃないけど別のことに向けられないのかな…」
「うーん…エミナくんもいい身体してるけど、クラサメくんの方が魅力的なんだよね」
「そういう意味じゃないし、全然悔しくもないよ」
「ほら、クラサメくん、黙ってないで行こっか」
「自由だよねカヅサ君」
「………」
「あれ、クラサメくんどこ行くの?」
「…お前の部屋で一息つくんだろう。違うのか?」
「違わないけど…どうしたのさ、随分今日は素直だね」
「嫌なら別にいい」
「嫌なわけないよ!うんうん、さ、行こうか。今日はちゃんともてなすよ」
「クラサメ君結構お人好しだよね」
「お前達には言われたくない」
「え?」
「エミナも、時間が空いてるなら来るといい」
「あ、クラサメくん僕のこと信用してないね」
「信頼はしてる」
「その逃げ方はズルいよ。まあ、彼の言う通り暇ならエミナくんもおいで」
「んー、じゃあお邪魔しちゃおうかな。二人いれば安心だよね」
「君も信用してないんだね」
「自業自得、だよ」
「…ふっ」
「あーあ、薬入れちゃおうかな…」


自分がどんな風になっても変わらず接してくれる存在。
あの事件のせいで周りから向けられる視線や噂が突き刺さる中で、それのいかに大きいことか。

周りを全く気に止めず、三人は歩き出して行った。




(さっきの飲み物はどうするの?)
(あとで僕が適当に飲むよ)
(薬、入ってたんじゃないのか)
(あれさっき新発売だからって買ってきただけだよ。君達の反応が面白かったから否定しなかっただけさ)
(………)
(………)
(やだなぁ、そんな目で見ないでよ)




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