novel | ナノ


▽ 4:魔物の王


「動けない…」
エミルは現在、魔物に密集されていて身動きがとれない状態になっている。魔物は襲いかかる気配はないが、身動きがとれないのは困るとエミルは冷や汗を垂らしていた。そもそもどうしてこんな事になったのかというと、話は10分前に遡る。

記憶喪失のエミルのために、ジュードがこの世界はリーゼ・マクシアと言い、霊力野と言う脳の機関からマナを発し、そのマナを与える代わりに精霊に術を使わせる精霊術が発達しているなどという事を説明していた。一通り説明し終えた瞬間、エミルに魔物が襲いかかる。
「エミル危ない!」
そう言い、ジュードが魔物を殴ろうとしたが、ジュードの拳が動く前にエミルの瞳の色が緑から真紅に変わり、剣を抜き魔物を切り裂く。
「この程度かよ、雑魚が」
そう言ったエミルの雰囲気は、先程までのエミルとまるで違い、ジュードもミラも驚くしかなかった。
現在のエミルの雰囲気は、逆らう事の出来ないまさに魔王と呼ぶに相応しく、周辺の魔物も焦っていた。
「エ…ミル?」
ジュードの声に反応して、ワンテンポ遅れて振り返ったエミルの瞳は、緑に戻っていて、先程までの威圧感も消えていた。
「今のって…」
エミル本人もよくわかっていなかった様子で呟く。ジュードが先程までの様子はなんだったのか聞くと、エミルも無我夢中でよく分からないと返す。気になるところはあるが、エミルが分からないのにこれ以上聞くわけにもいかないとジュードは村に向かっていこうとエミルの手を引こうとするが、先程までの威圧感から本能的にエミルを守ろうと察した魔物が、エミルの周りに護衛のように集まる。そして冒頭に戻る。

ジュードとミラは、魔物を恐れてエミルから少し離れている。ジュードが思いついた、と呟いて叫ぶ。
「エミルー!魔物に離れてくれって頼んでみたらどうかなー!」
エミルはその手があったか、と驚き、魔物達に動けないから離れてくれないかなと頼む。魔物達はわかった、と言いたげに散り散りになっていく。
「なんだか疲れた…」
「お疲れ様…エミルって魔物に懐かれやすい体質なのかな?」
「さぁ…?」
その後は魔物にも襲われず、ニ・アケリアに戻ってきたが、エミルは到着した途端大きく息を吐きその場に座る。
「はぁ…」
「おっ、戻ってきたか…アホ毛はどうしたわけ?」
突然座り込んだエミルをアルヴィンが不思議そうに見る、ミラは先程決まったことをアルヴィンに話し始めた。

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