novel | ナノ


▽ 2:四つの石と巫子イバル


何も覚えていない少年は、気づいたらここにいたと話す。いつまでも少年を問い詰める訳にはいかないと、ミラは四大精霊再召喚の儀式の準備に取り掛かる。

ジュードが麓の村、ニ・アケリアから持ってきたという4つの石を並べ、ミラが石に囲まれるように座る。ミラが陣を展開すると、石が輝く。
その様子をじっと眺めていた少年の瞳が、明るい緑から炎のような赤色になっていた事には、誰も気付かなかった。

陣の展開が終わっても特に四大精霊らしき存在も確認できず、ミラの息が早くなっている。
「ミラ様ー!」
突然社に飛び込んできたのは、銀髪で褐色の少年だった。
「イバルか…」
「ミラ様、心配致しました」
イバルと呼ばれた少年は、ミラに跪いていた顔を上げる。
「これは四大精来還の儀?なぜ今このような儀式を…しかし、これは…」
イフリート様、ウンディーネ様、とイバルが精霊の名を呼ぶが、反応はない。イバルはミラに何があったか聞く。

創世記の賢者の名前を模した機械―――クルスニクの槍を壊しに行ったら、四大精霊が消えたとミラは話す。
「そんなことが…」
「んで、精霊が召喚できないのって、そいつらが死んだって事?」
「バカが、大精霊が死ぬものか、大精霊も微精霊と同様、死ねば化石となる。だが、力は次の大精霊へと受け継がれる!」
「……って、言われてるね。見た人はいないけど」
(バカはともかく、この世界では精霊が死ぬと化石になるのか…というか、どこの世界でも四大精霊の名前は同じなのかよ)
そう、端で聞いていた少年は思っていたが、言葉にはしなかったので伝わる事はなかった。

ふん、とイバルが鼻で笑い、話を続ける。
「存在は決して死なない幽世の住人。それが精霊だ」
ジュードがこめかみに手を当て、ぶつぶつ呟いている。
「…だったら、四大精霊はあの装置に捕まったのかも」
「バカが、人間が四大様を捕らえられるはずがない!」
「けど、その四大精霊が主の召喚に応じないんでしょ?ありえないことでも、他に可能性がないなら、真実になり得るんだよ」
「主ねぇ…本当だか」
そう、ずっと黙りこくっていた少年が呟く、アルヴィンが
「なんか言ったか、少年?」と聞くが、少年はなんでもないと返す。
「四大を捕らえるほどの黒匣だったというのか…あの時…私はマクスウェルとしての力を失ったのだな
「ミラ…?」
ジュードの呼びかける声に呼び戻されたのか、ミラはその場を立ち社から出ようとする。ジュードは追いかけようとするが、イバルに阻止される。
「さぁ!貴様たちは去れ!ここは神聖な場所だぞ!ミラ様のお世話をするのは、巫子であるこの俺だ!」
イバルが、自分に指を指し歯を光らせドヤ顔するが、そんなイバルに対してミラが言う。
「イバル、お前もだ、もう帰るがいい。そうだな、有り体に言うぞ。うるさい。」
ミラの言葉が相当ショックだったのか、イバルはその場に座り込む。

「貴様らがしっかりしていないおかげでミラ様があんなことに!くそ!俺がついて行ってれば!」
イバルは手足を激しく動かしながら、ジュードに文句を言っている。
「マジで短気な奴だなぁ」
そんなイバルの言葉は耳に入ってない様子で、ジュードは社を去ろうとする。
「あ、ごめん、何?」
イバルは舌打ちし、話し出す。
「いいか、これからもミラ様のお世話は俺がする。余計な事はするなよ!」
アルヴィンも少年も去っていくイバルを呆れた様子で見ていたが、誰かの視線を感じ、振り向く、が、誰の姿もなく体の向きを戻した。
「ところで、放ったらかしてたけど少年、これからどうすんの?」
少年は慌てながら、アルヴィンの質問に答える。
「あの、僕、何も思い出せなくて何処に行けばいいか分からないですし…迷惑じゃなければ、貴方達と一緒に行ってもいいですか?」
ジュードは少しだけ困惑の表情を浮かべる。
「僕は構わないけど、ミラやアルヴィンにも聞かないと…アルヴィン、いい?」
「俺はもうすぐおさらばだからな、だからミラ様の返答次第だな?じゃ、俺は先に戻ってるわ」
「うん」
そう言い、アルヴィンも社から去っていった。


『あの連中と一緒に行くのか…まあ俺はあいつの事に首突っ込む権利はないしな…』
『でもあの自称マクスウェルの事とか気になってたんじゃないの、ラタトスクさま?』
『まあそうだけどな…あのアルヴィンとかいう奴、怪しさ全開だろ…』
『それは否定しませんけど』
『でも、エミル様戦えるんですか?』
『…………無理でしょうね。』
『はぁ…昔みたいに戦闘は俺が引き受けるか…』

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