小説 | ナノ

サナトリウム


「…なんだこれ」
段々と絶妙な感覚で積み上げられている書類の山。所狭しと置かれている本。床は足の踏み場も無いほどこれ等の物で埋め尽くされている。初めてこの状況を見た人は驚くかもしれないが、生憎俺はちっとも驚かない。もう慣れた。
一歩足を踏み出せば確実に崩れるだろう書類の束を気にせず崩して臨也を探す。すると書類の束が集結している所から聞き覚えのある声がした。

「ちょっと!束崩さないでよ!それ一応重要な書類なんだから…」

「知るか。これ以上崩されたくなかったら顔くらい出せ」

抗議の声を上げる臨也にピシャリと言い放つ。暫くしてのそのそと臨也が顔を出した。見事に書類は崩れることなく、絶妙なバランスで立っている。

「って、シズちゃん?なんで家に居るの?」

「今日は海行くって約束してただろ」

「え?今日だっけ?それ一週間後でしょ?」

「もう一週間経ってんだよ」

「うそ。まじで?ちょっと待って。すぐ準備するから」

バタバタと書類やら本やらを蹴散らしながら奥の部屋に入っていく臨也に溜め息を吐く。臨也は一つのことに熱中し始めると、日にち感覚が鈍くなり生きる為に必要な諸々を全てしなくなる。前は一週間飲まず食わずだった時もあったらしい。よくそれで生きて行けるものだ。一回新羅に解剖でもしてもらうか。

「おまたせ!」

ひょっこりと部屋から出てきた臨也に目をやる。日焼け止めを塗ったのか、微かに日焼け止めの匂いがした。

「おう。…てか風呂入れよ」

「いいよ別に。それより早く海行こ」

「…駄目だ。今日は海には行かねえ。お前は風呂入って飯食って寝ろ」

「えー!」

俺は至極当たり前のことを言ったのに、臨也からは非難の声が上がる。この分からず屋が!

「そんなフラフラな身体で海なんか行ったら危ねえだろ」

「大丈夫だって」

「駄目だ。ほら風呂入って来い。飯作っといてやるから」

「……はーい…」

渋々といった感じで風呂場へと向かう臨也を見送ったあと、冷蔵庫の中を確認する。予想通り空っぽの冷蔵庫に溜め息を吐いた。

「ったく…買いに行かねえと…」

頭を掻きながら独り言を漏らす。とりあえず買い物に行く前に臨也の様子でも見ておこう。風呂場で寝て溺れられたら大変だからな。
「……ぐう」

「起きろバカ臨也!」

END
生活感の無い折原さん可愛い。オラ…バカ臨也さんが好きなんだ…



  
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