明日。また明日 「平和島くんって、頭いいよねぇ」 「いつも満点だしねー」 「羨ましいなぁ」 あちらこちらで聞き慣れた噂が耳を刺激する。 煩い。五月蝿い。うるさい。 どうしても我慢出来なくて、教室から出て屋上に向かう。 屋上は静かで、とても居心地が良かった。 昔から俺は、勉強をしなくてもテストで満点を取れていた。 何もしなくてもすぐに答えが出てしまう、そんなだから、毎日がつまらなくて仕方なかった。 「俺が死んだって、代わりが居る」と、呟くことも馬鹿らしい。 三桁満点の再生紙を受け取る。 隣の席では、照れ笑いながら桁の低い点数の折原が席についた。 窓の外、求めないのは答えがすぐ浮かんでしまうから。 「そんなのつまんないよ」と、折原は楽しそうに再生紙で折った鶴を見せた。 折原が休むなんて違和感があって落ち着かない。 まぁどうあれ明日返るテストも、代わり映えしない結果なんだろうな。 ふと周りを見ると、泣いてる生徒達が目につく。 隣の席には、花を活けた花瓶が置いてあった。 それから数ヶ月が過ぎ、隣の席に花瓶が置かれることは無くなった。 折原の髪の色、折原の笑顔、誰かがもう覚えていないのかもしれない。 今日も息が詰まる程つまらない授業を受けながら、窓の外を眺める。 「窓の中空いた席は、そこからどう映っていますか」と、折原のこと知ったように何一つ解っていなくて。 少しでもそれを解っていられたなら、ずっと続いてくれたような日々は、何もない隣の席を見る度に無いものだと、気付かされてる。 教室で消えたい心を傷つけて、何度も隠し通して笑っていた。 ここから飛び降りて、居なくなった折原の笑顔を、 俺は明日も忘れない。 end. 透明アンサー// じん(自然の敵P) Feat.IA |