バケモノに粛清を。 「シズちゃんなんて大嫌いだ…」 「………………酷い顔」 私の上司である折原臨也は、天敵である平和島静雄に恋をしている。 正直、折原が恋をしようが失恋しようが、私にとってはどうでもいいことなんだけれど、怪我をして帰ってくる度に悲しそうに笑う折原を見て、私はこの報われない恋を応援したくなった。 そして今日もまた、 「波江さん…やっぱりシズちゃん、俺の告白を聞いてくれなかった……」 「…そう、……手酷くやられたわね」 涙を浮かべる折原は、左腕を変な方向に曲げられ、脚を引きずっていた。 …今日はいつにも増して酷い。流石の私も手当てのしようがない為、岸谷先生を呼ぶことにした。 暫くして岸谷先生が黒バイクを連れて来たので、私は拳を握り締めて折原のマンションを出た。 向かうは池袋。 折原を…いえ、臨也をあんな目に遭わせた張本人に会う為に。 「貴方が平和島静雄ね」 「…誰だアンタ」 冷たい機械のような声で俺を引き止めた見知らぬ美人。無表情だけど、どこか怒ったようにも見える。 一瞬、この女からノミ蟲の匂いがした気がするが、気のせいか…。 「よくうちの臨也をあんな目に遭わせてくれたわね」 「…あ?」 「毎回毎回。臨也が池袋から帰ってくる度に傷をつけて帰ってくるのよ。いい加減臨也を傷つけるの止めてくれないかしら」 不愉快な名前を口に出した女に、ピクリと青筋が立つ。と同時に疑問も浮かぶ。 俺は額に青筋を立てたまま、疑問をぶつけることにした。 「…アンタ、ノミ…あいつの何なんだ?」 「貴方に教える筋合いは無いわ。それじゃあ、さよなら」 俺の質問をバッサリと切り捨てて、人込みに紛れていく女。 結局誰だったのかは分からなかったし、一体何だったのかは分からないけど、とりあえず一発ノミ蟲を殴ろうと思う。 end. 波江さんの言葉はシズちゃんに届いていないようです。 |