07 思考停止





「最終、関門……!」

最終関門ーー怒りのアフガンと言うらしいーーに到達した久治木灯は一度足を止め、辺りを見渡す。
先頭はもう既に真ん中まで到達している。それに続いて他の生徒も地雷を避けながら走る。個性を使って争い合う者もいる。

仮に、何の策も練らないまま走るとする。戦闘になったら自分に勝ち目はない。運良く戦闘を避けることが出来、最後に全速力で走るとする。それなりの順位になっても、久治木はまだ目立つ行動を一つもしていないのだ。

普通科というハンディキャップ。華やかさに欠ける個性。例え予選を通過出来たとしても、注目度が薄ければそれまでだ。
きっと、モニター越しに見ているだろう父もそれを案じてるに違いない。

どんな形であれ、注目を集めなければならない。
ーーーーどうする……どうする……?!

この間、僅か5秒。
彼女は一つの考えに至り、行動に移した。
それはーー

「私は人より少し丈夫……!」

ざりっ、ざりっ。何度も繰り返されるその音は土と……それから、久治木の手によって成されるもの。手は徐々に血が滲むが、久治木はそれを厭わない。
彼女は、地雷を掘り出していた。

「まあ……」

途中、ツルのような髪の毛が生えた生徒に如何にも「痛そう」という顔で見られる。しかし、そんな目も気にしていられないのだ。
個性で地雷を取り出しながら進める彼女と違い、久治木の個性はーーーー

「! 地雷!!」

はっとした久治木はツルの生徒が土から取り出した地雷を慎重且つ迅速にかき集める。
自分の運の良さと、ツルの生徒がしてくれた行動(正確には久治木の為ではないが)に心から感謝し、久治木は地雷の山を作る。
大方完成した山を見てから、久治木は周りを見渡す。先頭にも他の生徒にも随分差をつけられてしまった。
しかし、それを解決するのがこの策だ。この地雷の山に飛び込んだ時、注目を浴びるに違いない。
そう思っていたのだがーーーー

「後方で大爆発?! 何だあの威力?!?!」
「偶然か故意かーーA組緑谷、爆風で猛追ぃっ?!?!」

ーー嘘だ。
久治木は立ち尽くす。自分が考えに考えた策は別の生徒が先に使ってしまった。しかも、ヒーロー科に。A組に。
再び使った所で注目度は低くなる。しかし、使わなければ予選を通過出来る順位に入れるかも定かではない。
もし、予選通過出来なかったら?私は、ヒーロー科にはーー


「久治木!!!!」



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