06 父





「…………灯」

スタジアムのモニターをじっと見つめ、ひっそりと久治木灯の名前を呟く一人の男。
燃え盛るように赤い髪は某フレイムヒーローを彷彿させる。
……と言っても、その某フレイムヒーローは男の隣にいるのだが。

「娘がいるんだったな」
「恥ずかしながら普通科に……それにしても、エンデヴァーさんの息子さんは流石ですね」
「当たり前だ。あれは俺の“仔”だからな」

至って普通のテンポで交わされる歪んだ会話。
そう。某フレイムヒーロー「エンデヴァー」の隣に並ぶのは、紛れもなく久治木灯の父である久治木紅平(こうへい)だった。

食い入るようにモニターを見続ける紅平は、ぎり、と歯軋りを立てた。
我が娘がモニターに映る瞬間はあっても、それはなんの面白味もないただ走ってる姿。常に個性を使用していても、全くと言って良いほど映えない。
このままでは「ただ足が速い少女」と周囲に認識されてしまうだけだ。
徐々に苛立つ紅平は遂にモニターから視線を外し、頭をがしがしと掻き始める。

しかしーー

「後方でまたまた大爆発ー?! どうなってんだぁぁ?!?!」

桃色の噴煙の中から出てきた姿に、紅平は口を歪める。



「しかもあれはーー……普通科だぁぁっ?!?!」



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