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新・忘却の英雄 02※18歳未満は閲覧しないでください。


 ジヴェーダは大体一か月に二、三度くらいの頻度でエメザレに会いにきた。当人が最初に述べたとおり、話しをするというよりも、酒を飲みながら鑑賞するようにエメザレを眺めているのが常だった。
 眺めて何が楽しいのかわからなかったが、拷問した時のことでも思い出して、それをつまみに酒を飲んでいるのだとしたら、美術館という表現は間違っていない。その時にはいつもエメザレに強いラム酒をくれた。少し酒に酔って、お互いの生い立ちについて語ったこともあった。
 ジヴェーダが会いに来る時は、昼も夜もフルコースで特別な料理が出てきた。美しい装飾の皿に繊細に盛られた食材は、この国で普通に生きていたら見かけることもできないものばかりだった。
最初エメザレの分も運ばれて来たときは驚いた。どうして自分にもこんな豪華な食事を与えてくれるのか、それまでのジヴェーダの印象から考えると信じられないことだった。
 エメザレは片手しか使えないので、初めの頃は看護婦レイテがいちいち切ってエメザレに食べさせていたが、看護婦の存在が鬱陶しくなったのか、いつの間にかいなくなり、代わりにジヴェーダが切って、犬か何かに餌を与えるように皿に放り投げてきたものをフォークで食べるようになり、多分それも面倒になって、最初から切られている料理が出てくるようになった。
料理人は相当見た目にこだわりがあったのだろう。エメザレのために切られた料理は、特別な形で鮮麗に盛り付けられていた。
 エメザレはジヴェーダのことがそもそも嫌いではなかった。彼は確かに自分を拷問したが、それはただの仕事だったはずだ。彼の意思ではない。王の意思だ。
 このクウェージアでは混血の灰色髪がつける職業はごく一部だった。貧困から這い上がろうとすれば、拷問師になるくらいしかないのだ。エメザレが強制的に軍人にさせられ、ガルデンという箱に詰められ訓練を受け、外へ行ってひとを殺さなくてはならなかったのと同じことだ。だから同業者みたいなものだと最初から感じていた。
ジヴェーダと話す時間は、それなりに楽しかった。

 しばらくすると、この場所は基本的にジヴェーダが拷問して気に入った女が入る施設なのだということに気が付いた。車いすで散歩する時、すれ違う女性は美人ばかりだった。エメザレは自分の存在は異端だと思った。
 中には二年前に起こった『白の大粛清』で生き残った子女と思われる白い髪がいた。もちろん彼女と面識があるわけではなかったが、家紋章の入ったストールのようなものを羽織っていたので気が付いた。
白の大粛清とは、とある力のある白い髪の貴族たちが、黒い髪にある程度の権利を与えるよう国王に直談判したことで起こった、宮廷内の事件である。
貴族たちは一族根こそぎ処刑されたが、十五歳以下の女子だけは子宮を焼くことを、つまり子孫を残さないことを条件に処刑を免れた。宮廷はそれを恩情と表現した。
 ともすれば、ここにいる多くの女性たちは妊娠しないのかもしれない。それは拷問師にとって都合がいいのだろうと思った。
 確かに片足がなかったり、指や耳がちぎれているひともいたけれど、みんな美しかった。彼女たちは綺麗に髪を結ってもらい美麗に化粧をして、光輝く装飾品をつけていた。高級な白い女性用の入院着は首元と袖口と裾の部分にたくさんのレースがついている。
この施設では常に甘いルーノリアの花の香が焚かれていた。だから彼女たちの身体からは、きっと花の匂いがするのだろう。
 エメザレだけが違う意図でここにいる。おそらくジヴェーダは愛国の息子達の動向を気にしているのだ。そのためにここにエメザレを置いた。
 当たり前だが、黒い髪の反乱が頻発している時世に、一時的とはいえ、それでも英雄と呼ばれた存在を瀕死にさせたのだから、反発が起こることくらい予測できる。
世間がいくらエメザレを忘れ去っても、エスラールは、そしてエスラール率いる愛国の息子達は忘れない。あのエスラールがいる限り愛国の息子達はいずれ動き出す。エメザレを手元に置いておけば、その周りの動向をある程度は把握できる。
 エメザレはそのためにここにいる。彼女たちのように愛でられるためではないのだ。

 そして約半年が経った。158期の愛国の息子達は長らくの軍期を終え、ある程度の自由を与えられた。住む土地と家を与えられ、地域もある程度自由に選択することができた。十六歳から二十四歳までの兵役に対する恩給として、かなりまとまった額の金銭も支給された。家族を持つことが許され、婚姻祝い金や出産手当、そして死ぬまで定期的に年金が支払われる。
 彼らには二十五歳を過ぎてやっと安泰が与えられたのだった。

 半年ぶりに会ったエスラールは変わりないように見えた。
エスラールは十五人ほどの同志を連れてお見舞いに来てくれた。たくさんの懐かしい顔ぶれは泣きたくなるほど嬉しいものだった。
 エスラールは強くエメザレを抱擁した。同志たちは祝福するように拍手を送った。
 エスラールには徳がある。魔法のような徳だ。彼がいると魔法のように世界が明るくなるのだ。エメザレの世界だけではない。どんなひとの世界もエスラールの笑顔は明るくしてしまう。
 自毛だが昔から茶髪で猫っ毛でくせ毛だ。笑うとくっきりとした笑窪ができて、大きめな口元はエスラールの笑顔を最大限に生かしている。美男子ではないが愛嬌がある顔だ。彼の屈託のない笑顔を見るとつい、みんな心を許してしまいたくなる。
そして本当に、信じられないような純潔な魂の持ち主だった。昔々に忘れ去った赤子のように純粋無垢な気持ちを、大人になった今ですら大切に保存してあるのだ。彼に触れていると自分も心が綺麗になれるような気がする。
その魂は全てのひとびとから愛されるために生まれて来たようだ。
軍人として有能であり、統率力の権化だった。この人ために力になりたいと思わせてしまう天才だ。天性の人たらし。しかもなんの意図も魂胆もない。思ったことをそのまま口にして本当に実行してしまうだけ。
エスラールはエメザレの大切な恋人だった。
だが恋人だという部分を慎重に取り扱わねばならない。大半の同期生はエスラールとエメザレの関係性を知ってはいたが、柔らかく避けていた。昔はそうでもなかったが、大人になっていく過程でなんとなく触れてはならないものとして扱われた。認めてはいるが、一線を引いているのだ。
クウェージアの国教であるエルド教では同性愛を否定している。誰もかれもが狂信的なエルド教信者なわけではなかったが、それでもクウェージアの全体的な価値観としては、同性愛に関して目をそらすことが一般的であり、触れないということがマナーのようなものだった。
「俺はこの近くのサーテドルインって都市に住むことにしたよ。すぐに君に会いに来れる」
「僕も同じ町にしたよ。今日来たみんなもサーテドルイン」
とヴィゼルが言った。
ヴィゼルはエスラールとエメザレの共通の親友だった。
昔に比べると随分といい男になったと思う。昔はなんだか間抜けな顔をしていたが、貫禄がついて落ち着いた。でも笑うとまだ昔の面影があった。相変わらずの短髪で目が小さく鼻梁が広い。
 ヴィゼルは、エメザレがエスラールと出会うよりずっとずっと前から、エスラールの親友だった。エメザレがエスラールの恋人になった時、おそらく本当に悔しかったのだろう。ヴィゼルが泣いたことを覚えている。
けれども一番に認めてくれたのもヴィゼルだった。ヴィゼルはエスラールの判断を信じた。エスラールが言った、「エメザレは本当はとってもいい奴なんだ」という一言を信じたのだ。
 エメザレを恋人にしたことで、しかも公言したことで、エメザレに対してはもちろん、絶対的な人気者であったエスラールにすら、同期生たちは一時期、侮蔑の意思を見せたが、ヴィゼルが二人を祝福すると断言したことで、一気にあの殺伐とした雰囲気が治まったのだった。
 看護婦レイテが来客用のお茶とお菓子を持ってきた。ソファに座りきれない同志たちは立ったまま菓子を頬張り、誰かがこっそり持ってきたワインをお茶のカップに入れて精一杯のささやかな祝杯をあげた。
 彼らが気を利かせて、エスラールだけを残し去ったあとでエメザレは言った。
「ここは拷問師ジヴェーダ様が建てた施設なんです。だから気を付けて」
 エスラールは信じられないというような表情を浮かべて眉をひそめた。
「エメザレ、大丈夫か?」
「大丈夫だよ」
「何もされてないよな」
「されてないよ。エルド系の教会病院に比べたら楽園だと思う。とてつもなく丁寧ですよ。ここにはジヴェーダ様の恋人がたくさんいるみたい。顔は美人なんだけど胸が片方なかったり、指がなかったり、足が不自由とか。外の世界じゃ生きていけない女の人を囲ってる。みんな囲われてそれなりに幸せみたいです。綺麗な服を着て着飾ってもらって環境に安心してるみたい。不思議な場所だけど、それで助かっているひともいるからね。私もそうだけど。ジヴェーダ様は別にそんなことしなくてもいいんですよ。だって仕事でしたんだから。尻拭いなんてしなくていいでしょう。でもきっと気に入ったからかもしれないけど、救っているのは事実じゃないかな。本人は否定するでしょうけど」
「そうか。エメザレは優しいね。言っていることはわかるよ。でも俺は許せないな。多分、出会ってしまったら無理だと思う。目の前に現れたらほんと多分無理。君をこんな風にした。あんなに、あんなに綺麗だったのに。救えないのが辛い。君をここから出そうとしたが駄目だった」
 エスラールはエメザレの長い髪を撫でた。丁寧に手入れされている髪の毛は艶やかで、それが唯一エメザレに残されたかつての名残のようだった。
「ごめんね。こんな顔になって。君のほうが辛いでしょう」
「違うよ。そうじゃなくて、顔なんかなくていいけど、俺は人格が好きなわけだから。顔はいいけど、好きな人がこんなに傷付けられたら、怒るだろ。無理」
「そっか」
 エスラールはエメザレを抱きしめた。エスラールはいつも温かいと思う。この優しい温もりはいつもエメザレを救ってくれた。エスラールの匂いを嗅いでいる時、とてつもなく切なくて安心した優しい気分になれた。太陽の光で温められたぽかぽかの毛布に顔を埋めているような気分。大きな偉大な木の下で何だか守られているような気分だ。
「エメザレ死ぬなよ。生きていて欲しい。ずっとずっと、ちゃんと生きろよ。大好きだから。俺がここから出してやるから。待ってろよ」

 拷問師ジヴェーダの作った施設だと伝えたにも関わらず、エスラールは全く気にせずやって来た。
 エスラールはいつも本を差し入れてくれた。本は片手でもなんとか読めるので、一人でいる時の有難い娯楽だった。
それに家でわざわざ料理を作って、エメザレのために持ってきてくれる。味はとても美味しいけれど少し不格好な卵焼きや、食べ方がわからない具をたくさん挟みすぎたサンドウィッチや、果物や、町で買ってきたお菓子だ。
 本も果物も、ましてお菓子など普通は手に入らない高級品だ。クウェージアはいつも貧しく黒い髪はみんなやせ細っていて、愛国の息子達が通り過ぎる時、畑を耕す手を止めて、泥だらけの表情のない顔で彼らを見送っていた。
町に住み、食料を買うことができ、店に行って買い物ができるのは、ごく一部の、例えば愛国の息子達のようなひとびとしかいなかった。
 時々同志たちやヴィゼルも連れてきた。みんなで酒を飲んでいると昔に戻ったようで楽しかった。
 エスラールが卒隊してからというもの、なぜかジヴェーダは一度もエメザレを訪ねてくることはなかった。
実のところエメザレは安心していた。エスラールの性格上、絶対にジヴェーダを許せないだろう。鉢合わせして争いが起こることをエメザレは恐れていた。
 単純に争って勝つのは軍人のエスラールだろうが、ジヴェーダは身分を使って報復するだろう。エメザレは仲裁に入ることもできない。変な争いのせいでエスラールの将来が歪むことが恐かったのだ。
 エスラールはいつも、エメザレに持ってきた料理やお菓子を小さく切って口まで運んでくれた。それが嬉しいみたいだった。餌付けしているみたいで面白いと言っていた。エスラールは絶えず笑って、楽しい話をする。彼から冗談を取ってしまったら何も残らないのではないかと思うほど、エメザレといる時はずっと面白いこと言って楽しませてくれた。
 ほとんど毎日やって来て、ただただとりとめのない話をするのだが、なぜかエスラールが話すとくだらないことでもすごいことのような気がする。とてもささやかな幸せかもしれないが、エメザレにとってはかけがえのない一時だった。ただただ笑っていることが、この国では常に難しい。
 それは切り取られたように幸せな半年間だった。
 だが、もちろんそんな日は長くは続かない。
 クウェージア内で、農民たちの暴動が起こったのだ。そもそも暴動は頻発していて、エメザレが宮廷に招かれた理由も暴動を治めるためだった。黒い髪を宮廷で働かせてやるから鎮まれということだ。
一時は皆その動向を見守ったが、結局エメザレは拷問されて返されただけだった。期待を向けられた英雄は失望され失墜したが、その時の失望は大きな渦となって偉大なる白い髪への報復に繋がった。
 クウェージアは予備役の軍人たちに招集をかけた。エスラールも招集された一人だった。愛国の息子達は十六歳から二十四歳までがいわゆる兵隊であり、二十五歳以上の予備役が指揮官としてあてられる。
エスラールは初めて指揮官として出撃するのだった。エスラールはそれが嬉しかったようで、少し自慢気に説明すると、しばらく会えないことを名残惜しみながらも、理由のない期待に目を輝かせながら、内紛地域へと旅立っていった。
 三か月の予定だとエスラールは言っていたが、エメザレはおそらく長引くだろうと予想していた。
反乱は起こる度に規模を増していた。人数だけで考えるなら愛国の息子達の方が圧倒的に少ないはずだ。苦戦するのは目に見えていた。


エスラールがいなくなると、途端に寂しくなった。誰もやってこない病室で一人、ぼんやりしていると、時々たまらない気持ちになった。
 そんな気持ちを知ってか知らずか、しばらく姿を見せなかったジヴェーダがひょっこり訪ねてきた。もちろん片手には酒のグラスを持っている。約半年ぶりの再会だったが距離感は変わっていなかった。お互い酒を酌み交わしても、あまり口数は増えない。しばらく飲んでからでないと特に話題が思い浮かばない。
 ジヴェーダは相変わらずソファから足を半分出して寝転がっている。
「この半年ほどお前らを遠巻きで眺めてきたが、お前ら恋人だったんじゃなかったのか?倦怠期かなんかか?」
 こんなに自然に、その話題をふってくる人物に、この国では出会ったことがなかったので少し驚いた。普通は男に男の恋人がいることを意図的に無視する。
「やはり気を使ってくれていたんですね。鉢合わせたらどうしようかと心配でした」
「お前の彼氏は面倒くさそうだからな。面倒な喧嘩に巻き込まれたくない」
 エスラールは正義の塊のような性格なので、存在自体が悪だと言われてるジヴェーダがそう思うのも当然かもしれない。
「で、なんでお前を抱かないんだ」
「笑わせないでくださいよ。どこの誰が今の私を抱こうと思うんですか。昔ならともかく」
「そうか? 俺は本気で好きな相手なら、どうなろうが対処するけどな」
「それに……それにエスラールは男が好きじゃない。だからもう、そういうのは元々あんまり」
 最後にしたのがいつだったのか思い出せなかった。エスラールとエメザレは恋人というより長年連れ添った夫婦か、もしくは行き過ぎた親友のような存在だった。抱きしめあったりキスをしたりするけれど、あんまり最後までしない。
 そもそも最後にした相手はエスラールではない。目の前にいるジヴェーダだった。宮廷にいた頃に毎日のように残酷な方法でいたぶられた。
自らの意志で宮廷を去るようにしむけるための嫌がらせだ。男しかいない環境で育った愛国の息子達への、宮廷からの侮蔑的な仕打ちだった。犯されることに慣れている自分が行ってよかったと思ったのを覚えている。
そんな相手と今は静かに飲んでいるのだから、改めて奇妙なものだと思った。
「男が好きじゃないのに男のお前と付き合って何が楽しいんだ、あいつは」
「さぁ」
「なんでお前を物体としてとしか認識しないんだ。視覚的に無理だったら違う手段を考えればいいだろう」
「つまり肉体に欲情するのではなくて、違う感覚で欲情しろということですか」
「そうさ。俺は物体に欲情しているわけじゃない。俺は男に欲情しないし、そもそも女にだって無条件に欲情するわけでもない。だが犯すという行為には破壊力がある。尊厳や威厳をいとも簡単に破壊できる。だから何か特別な事情でもない限り、拷問する相手が誰だろうと、とりあえず犯すことに決めている。しかし考えてもみろ、俺が通常対峙する相手にお前みたいな綺麗どころは滅多にいない。醜いおっさんや小汚いじじいが大半なんだからな。そいつらの肉体に俺が欲情できるわけがないだろうが。俺が欲情しているのは状況に対してさ。つまりくそみたいなこのじじいは、これまでの人生において一度も一瞬たりとも、自分が犯される日が来るなんて思って生きてこなかった。俺が対峙するのは大抵白い髪だから、あいつらは生まれてからずっと綺麗な服を着て、美味いもん食ってえばり散らして、俺のことなんて害虫ほども気にすることもなく優雅に生活していたわけだからな。俺なんかよりずっとずっと立場が上の天上みたいなところに住んでたくそじじいさ。そのじじいを前にして、俺は今なんだって好き放題に蹂躙できるのさ。その全能感に欲情してるんだ。そのじじいに突っ込む時、俺は心から生きてて良かったと思うのさ。それを世間様では邪悪というんだろうが、そのお陰で俺はここまで出世できたんだから、俺は自分の性質にむしろ感謝している」
 エメザレは否定する気にならなかった。共感はできなかったが、彼の理屈を理解できた。
「なるほど、それで?」
「で、俺が言いたいのは、あいつはもっとお前に向き合うべきなんじゃないのか。俺だって最初からじじいに突っ込めたわけじゃない。仕事として向き合ってそういう手段を見つけただけだ。それならあいつだってお前に向き合って、お前の性質を対処する手段を考えるべきだったんじゃないのか。それができないなら、潔くお前を手放して男が好きな奴とくっつけて、祝福してやればよかっただろう」
「あなたの言っていることは、もしかしたらすごく正しいのかもしれない。本当にそうして欲しかった。そうだったら、向き合って一緒に考えてくれていたら、きっと嬉しかったでしょうね。でも私はエスラールが好きなんですよ。肉体を愛してもらえなくても、自分でも理解できないくらいにね。大好きなんですよ」
「なんだか寂しいやつだね。お前は。おかげでいつも酒が美味い」
 来客用のソファにだるそうに寝そべったまま、ジヴェーダは呟いた。
「嫌なひと」
 エメザレは少し笑った。

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