プロローグ


ラルレの空中庭園には生命の木がある。
その木に生えている生命の実を食べると不老不死になる。

どこの誰が書いたのかは不明だが、そんな本がある。「ラルレの空中庭園」と題された冒険小説の類だ。
子供だましだ。とほとんどの者は言うが、その本に書かれている歴史的な動きや人物名は全く史実そのもので、長い小説のほんの片隅にラルレの空中庭園の記述があるのだ。しかも場所や住んでいる人物、生活などについてかなり事細かに書いてあることから、実在の場所ではないかと信じる者もいた。
本によれば庭園はシャザの山の東側を三日登ったところにあり、入り口の近くには古き国の王の巨大な像が崩れかけた様子で立っている、と書かれている。確かにシャザの山のふもとには昔、イルダーレという国があり、王シグラトスは自分に不可能はないと証明しようとしてシャザの山に大きな像を造らせたという事実があった。
像が存在するなら、庭園も存在するのではないか。

だがそれは永遠の謎だったと言っても過言ではない。今までに多くの冒険者や考古学者が山に登ったが、凄まじい吹雪に見舞われ発見できないまま、死体か死に掛けた状態で帰ってくるのがやっとだった。
そのような理由で今の時世、シャザの山に登ろうとする者は限りなく頭の悪い輩か愚か者か放蕩者か、とにかく普通ならばまずしない前に考えないことだった。


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