家族ごっこ3
2013/11/08 19:07
「……お前さ、何のつもりなんだ?普通母親が出ていったら、自分も出ていくだろ。いつまで居座るつもりなんだ?俺が出ていけって言うまで甘えるつもりか、親がアバズレなら子も厚かましいな……」
楓が初めてまともに修吾に話した言葉は、修吾の胸に突き刺さった。
分かっていた。言われて当たり前のことだ。しかし唐突に訪れた幸せの終わりの瞬間に、修吾の足は震える。
自分はここを追い出されたら、行くところはない。もう一応生かしてくれていたあの母親もいないのだ。きっと今度こそ本当に、寒い街の片隅で、飢えて死ぬしかなくなってしまう。
気が付けば、土下座をしていた。
「楓さん本当に申し訳ありません……!でも俺っここから追い出されたら行くところがないんだ……!お願いです、何でもするからここに住まわせてください、お願いします!お願いします……!」
絶望の恐怖に涙を流し訴える修吾に、しかし楓はどこまでも冷淡だった。
「……そんなの俺に関係ないからな。あんな女しか親のいない自分の運命を恨めよ。さあ、もう出ていけ、早く」
「ごっごめんなさいごめんなさい!楓さん!俺本当になんでもします!もう楓さんが嫌がることしないから!だからお願いだからここに置いてください!お願いします……!」
楓が修吾の腕を掴み、引きずるように玄関へと向かう。
修吾は泣き叫びながら必死に訴えた。
怯えそれでも縋る修吾に、楓がピタリと足を止める。
「どんなことでも?へえ?例えば?」
「わがりませんすみません……!でも楓さんがやれって言うことはちゃんとします!だから、だからお願いします……!」
答える修吾に、篠宮が嘲笑する。
「まさに乞食だな」と吐き捨てた後、今度はリビングに向かって修吾を引きずり始めた。
そのままリビングのソファーに投げ飛ばされ、修吾は衝撃に呻き、咳き込む。
「か、楓さん……?!」
「何でもするんだよなぁ。俺さ、正直料理とか掃除とかそういうのいらないんだよ。健気にアピールされても煩わしいだけだからな。……それよりも、大人の男が必要なモノって何だか分からないのか?その歳で?」
修吾の上に馬乗りになった楓が、修吾の胸倉を掴み上げながら言う。
分からないと怯えたまま首を横に振る修吾に、篠宮はどこまでも冷たい表情で宣った。それでも何処か、ギラついた目で。
「性欲処理の相手だろ、修吾。お前の母親が放棄した仕事だ、しっかり責任とれよ」
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