社内恋愛3
2013/11/19 16:57

「溝山さんと飲みに行く?」

「うん、主任昇格とか営業成績No.1のお祝いして欲しいんだって、あいつも面白いとこあるよな」

現場での作業を終え帰社した川田は、事務所にいる東堂に報告をした。
いつもは部下や上司、同僚と飲みに行くと言うと、「そう。気をつけて行ってきてね」と笑顔で送り出してくれる東堂だが、一瞬、何か思案するように押し黙った。
やばい、今日もしかして俺と何か用事入れる予定だったのか?
慌てた川田は東堂に問い掛ける。

「あっごめんな瞭毅?もしかして何か俺に用あった……?」

「……いや、まあ修吾の予定が無ければ、いつも通り夕飯を一緒に食べたいけど、そうじゃなくて……」

珍しく言い淀む東堂に、川田は不安になってしまう。
付き合ってからも特に喧嘩もなくやってこれたのは、お互いに正直にプライベートの予定も報告しあっているし、ある程度は好きに言い合えているからだ。
にも関わらず、今、東堂は慎重に言葉を選んでいるように思う。

なんだろう、溝山と東堂の仲は悪かっただろうか。
イヤ別段そうと感じたこともないし、東堂が言い淀んでいる理由が分からない。妙な緊張感の中にいる川田に気付いたのだろう、東堂が「あ、ごめんね」と顔を上げ謝罪してくる。

「何処に飲みに行くの?」

「あ、駅前の居酒屋にしようと思ってるんだけどさ……」

「そっか……ねえ修吾、申し訳ないけど、お願いがあるんだ」

「うん?」

「いや、ね……最近噂でさ、溝山さんあんまり酒癖良くないって聞くから。グダグダになる前に帰っておいでよ」

「っえっ」

「修吾も本格的に酔うと、ちょっと足取り覚束なくなっちゃうでしょ。無理なら迎えに行くから、何かあったら必ず連絡して」

「す、スマン……」

東堂の言葉に頭が挙がらない。
どうやら二人の酒癖を心配してくれていたらしい。

東堂と「何かあったら連絡する」と約束を交わし、一旦自室に帰る。
溝山との約束の時間まで、後1時間程だった。








「おい溝山!しっかりしろ!大丈夫か!?」

「……うう、ワリィ修吾、なんか今日酔い方が……ウウェッ」

「わわわっほら、袋袋!」

溝山と駅で合流し、店で飲み始めて2時間。
最初は調子よく杯を交わし、談笑しながら飲んでいたのだが、溝山の様子がおかしかった。
1時間半を超えるかどうかのあたりで口数が減り出し、今では酔いというより気分不快でダウンしてしまっている。



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