落ち込むこともあるけど彼は元気です



「はぁ〜……」

「……ん? どうしたのマリク?
ため息なんてついて……」

「…………

なんでもねえよ……」

「えっ……」

柄にもないマリクの落ち込みように、私は不安を覚えた。


「大丈夫? 何かあったの……??」

マリクの顔を覗きこむが、半分だけ開けられた眼が深闇を湛えて放心していた。


「人生って……

疲れるぜぇ……」

「えっ」

「…………、はぁ……」

「――えっ、ちょっ、やだ、マリクってば!!
な、何があったの!?
不安になっちゃうよ、ほら、こっちおいで?

……ってわわっ!!」

ゴロリ、と寝そべったマリクの頭が正座する私の膝に乗せられる。

ひざ枕ですか……


「マリク……大丈夫?

マリクでも……
疲れちゃうことはあるんだね……」

「…………」

そっと、色素の薄い金髪の頭を撫でる。

マリクは猫のように眼を細めてその感触を感じているようだった。


「誰でも疲れちゃうことはあるもんね……!
そういう時はまあ……甘えていいからね」

「別に甘えてねえよ……」

「ふふふっ」

薄目を開けて小さな声で抗議をするマリクが可愛くて、私はただそっと頭を撫で続けるのであった――――






「え……なにそれ」

「だからよォ、セーブデータが消えちまったんだよォ!!!

もう少しでクリアだったのによォ……
ありえないぃぃ!!」

マリクはプレ●テを掴んでガタガタさせながら涙目で激昂していた。


「え……
だからあんなに落ち込んでたの……?」

「ヒドイぜぇ……!!
くそっ、こんなもの全部破壊してやる……!!」

「やめてっ!!
あ〜もう、同情した私がバカだった!!!」

「ククッ……
太ももフカフカだったぜ……」

「ばかっ!! もう知らない!!!」





(おい……もう一度膝を貸しなぁ……!!)

(や、やだっ!)

(なんだとぉ? おぉ〜ん?
酷い目に遭いたいってかぁ……?)

(ちょ、やめ……!! んんんっ!!!)




END


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