満たされた世界4



「ケッ……! 愚かなお前が何を考えたのかは想像に難くねえが……
くだらねぇ……!!
お前にはオレ様に最後まで付き合ってもらう……!!
いまさら逃がすかよ!」

「っ……、バクラ、あ、」

眼の奥からどんどん湧き上がってくる涙。

慌てて手でそれを拭いながら、ツンとしみた鼻の奥と締め付けられた喉をどうにかしようと、浅い呼吸を繰り返す。

「桃香」

バクラの秘やかな声が鼓膜を撫でる。

「オレ様じゃなきゃ満足できねえんだろうがオマエは……
認めな、桃香……

オレ様の残り香を嗅いだだけで頭がイカレちまうとよ……
その身体がいやらしく疼いてたまんねぇとよ……!」

耳元に口を寄せたバクラがゆっくりと囁き、その声は即効性の毒のようにたちまち全身を駆け巡った。

シャラ、と音を立てて私の胸に落ちた千年リングは、金属特有の冷たさを放って輝いていた。

「んっ……!! やぁ……っ、あ……!!」

熱い吐息と共にゆっくりと耳を噛まれ、生まれた電流が背筋を勢いよく走っていく。

「や……っ、だめ……!! はっ、ん……!!」

耳に舌を這わされ、呼応するように下半身が切なく痺れる。

バクラが挙げる私の性質、素直に認めるには抵抗があるその言葉は多分事実だ。

触れられるだけで――
否、触れていなくても残り香だけでたやすく反応してしまうこの身体が、何よりの証拠なのだ、きっと。


「……認めるか? 桃香……全部よ……」

「っ……
うん……、認め、るよ……」

身震いをしながらそっとバクラに答えれば。

「っ、あ……!!! ッッ、だめっ……!!
あ――ッ、やぁぁっ……! っ、ダメっ、ん……!」

素早く伸ばされたバクラの手に下半身を探られ、抗う暇もなく、火照った部分を直に指でなぞりあげられた。

さっきまでジリジリと燻るだけだった身体の芯から、瞬時に炎が噴き上がる。

「どんだけ発情すれば気が済むんだよ、お前は……!!
こんなにだらしなく濡らしやがって……!!
自分で自分を慰めるのは興奮したか……? 桃香よォ……!!」

バクラの指が、ぬるぬると潤んだ部分をなぞり続ける。

意地悪く問い掛けるその声に、私は首をふるふると振って必死に否定した。

「んっ、ちが……! してな、してな……っ、あ……!!!
してない……っ、してないよ……っ!!」

「どうだかな……!!
何もしてないとしても、オレが来なかったらどうなっていたやら……」

「っ、しない、しないよ……っ! あ……っ!
が、がまん、する……!! っ……!!
あッ、違っ、ちが……!!」

思わず口走ってしまったあられもない事実に、羞恥心が頭を擡げ、またふるふると頭を振る。

いくらバクラが引かないとは言っても、やっぱり自分の淫らな部分を認めるのは恥ずかしかった。

「ククッ……、そうか……我慢してたってか……
いいんだぜえ桃香……! もう我慢しなくてもよ……!!
お前のしたいようにねだってみな……!
オレ様が見ててやるからよ……っ!!!」

「ッッ、はっ!!! あ……!!!
や、バクラぁ、や……!! ナカ、だめ……っ!!」

とめどなく蜜を溢れさせる部分を掻き回しながら、バクラのしなやかな指が深みへと沈んでいく。

身体のナカを指で探られて、恥ずかしさのあまりバクラの腕を掴んで首を振った。

「いまさら何を取り繕うってんだ……?
さっさと欲しがりな、淫乱女」

「っ……、あ……っ!
や……、だめ……っ!! ッッ……
はぁっ……!! バクっ……!!あ……!
や、ダメっ、あっ、あ……!!」

ナカを探られながら、違う指で一番敏感な芽を押し潰され、つんざくような電流が脳天を貫いた。

脚を閉じ身を捩って快感に耐え、あられもない嬌声の漏れ出る口を指を噛んで抑えにかかる。

が、バクラのもう片方の手によってそれは阻まれ、身体の芯を攻められたままただ私は、身をくねらせて喘ぐしかないのだった。

「っあ、バクラぁ……! 指、だ……め……!!
やだ、や……っ、……あっ、バクラが……い……
バクラが、ほし……っ、欲しいよ……ッ!!」

息も絶え絶えに絞り出した、切れ切れの言葉。

淫らでごめんなさい、欲張りでごめんなさいと心の中で叫びながら、潤んだ視界いっぱいにバクラを映す。

やがて指で乱暴に涙を拭われた後には、いつもの不敵な眼差しをしたバクラがいた。


「すぐ泣く、すぐヨガる……
一人にしても、人の服の匂いを嗅いで勝手に発情しやがる……
全くどうしようねぇ女だな、お前は……!

ククッ……、だがまあいい。
その執着と忠誠には応えてやるよ……! 少しだけな!!
感謝するんだな、桃香……っ!!!」

揺らいだ影に、ガリ、と首筋を噛まれ、痛みに身体を強張らせると、やがてゆっくりと覆い被さった影に唇を塞がれた。

躊躇いがちに吸った唇は柔らかくて、また頭の奥がびりびりと痺れた。

思わず、首筋に腕を回そうとしたところで――
バクラがおもむろに上半身を起こす。

離れていく体温に寂寥感を感じながら、息をついて深呼吸を繰り返してみれば。

バクラのギラつくような双眼が獲物を捕らえ――

獲物になった私は、灼けつくような劣情をまといながらバクラに貫かれたのだった――――


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