「ふんふんふふ〜〜ん♪」
少し熱めのお湯が、身体全体を火照らせていく。
視界に広がる景色は都会とは全く違う自然に溢れていて、部屋もお風呂もかなり立派だし、期限切れ寸前だったとはいえやっぱりあの宿泊券はかなり良いものだったんだ、とぼんやりと考えた。
――返ったら遊戯君のおじいさんにお礼を言いたいな……
あ、でも、誰と行ったのってことになってそれはマズイか……
とめどない思考を巡らせながら、ゆったりとした時間を過ごす。
とても心地の良い時間だ……――
「おい貴様……
オレ様を差し置いて随分と自由好き勝手に過ごすじゃねえか」
「!!!???」
背後から発せられた不機嫌な声に心臓がドクリと派手な音を立て、慌てて振り返る――
衝撃でお湯がザブリと音を立てて浴槽から溢れ出した。
「バクっ……!」
声を上げた瞬間目に映ったのはバクラの白い髪と肌、そして胸元に輝く千年リングで、反射的に直視してはいけないと視線を外した次の瞬間に――
またお湯がザブリと音を立て、まさか、と思った時にはバクラの白い身体はお湯に浸かりつつあって。
呼吸が止まるほどの衝撃に視線を戻せずにいたら、視界の端で動いたバクラの白い手がお湯を掬い――
刹那、顔に熱い衝撃。
「やっ……!」
「ヒャハハッ!!」
お湯をバクラにかけられたのだと気付いた時には、反射的に目をこする羽目になっていたのだった。
「うぅ……バクラぁ……お湯目に入ったぁ〜……!」
「ハッ……
そんなことより随分といい格好じゃねえか」
「ッ!!!!」
からかうような言葉に、今の自分の状況を思い起こしてみれば。
「っわ〜〜ッッ!!!」
バクラの前で無防備に裸身を晒していたことにようやく気付いた私は、慌てて自分の身体を抱えバクラに背を向けてお湯の中にしゃがみこんだのだった。
湯舟がザブリと音を立て、お湯が浴槽から溢れだす。
「ぅあ……あ……
な、なんで……!!!」
背後には鼻で嘲笑うバクラが、一緒の浴槽に漬かっていて。
さらに予期せず裸を見られたとあって、頭は瞬時に沸騰し、心臓はキリキリと締め付けられ激しく高鳴り続けるのだった。
「チッ……色気のねえ反応しやがって……
いつもは裸どころかあんなに無様で淫乱な醜態を晒してるクセに、何を今更――」
「わ〜わ〜!!!!
ゴメンなさいゴメンなさいダメ私もう恥ずかしすぎて死んじゃうよ!!!」
「おっと逃がすかよ」
「あっ」
頭がスパークしそうな状況に、背を向けたまま立ち上がって慌てて浴槽を出て行こうとしたところで――
素早くバクラに腕を引っ張られ、バランスを失った身体はお湯を激しく叩いてバクラの腕の中に倒れこんだ。
「ッッッ――」
「せっかくオレ様が一緒に入ってやろうってんだ……
遠慮すんなよ……ククッ」
「ぁ……」
浴槽の中で背後からバクラに身体を捕らえられ、低い声が耳元を撫でると完全に逃げ出す術を失ってしまうのだった。
背中越しに固いリングとバクラの素肌の感触を感じ、背筋が粟立つ。
「言ったよなぁ……オレ様をこんなところまで連れ回した礼はしてもらうと……
つーかオレを誘った時点で……
ククッ、お前もこういうのを期待してたんだろ……?
その想いに応えてやるよ……!」
「ッあ……!!」
そう言ってぬるりと首筋に這わされた舌が、全身に電流を生む。
「だめ……っ、ああッ」
次いで耳を優しく噛まれ、背筋をゾクリとしたものが撫でていくと、身体の力は抜け心の中には鮮烈な熱が生まれていった。
「フン、駄目じゃねえだろ……期待してたクセによ」
「や、ちが……! んんッ……!!」
顎を掴まれ半ば強引に横を向けさせられると、否定の言葉を遮るように唇を塞がれる。
「ん……ふぅ……んん、ば、く……」
歯列を割って侵入して来た舌が咥内を撫で回し、心臓がまた切なく収縮した。
絡みつくバクラの舌が呼吸を奪い、お湯で火照った身体にさらに別の熱を生んでいく。
溶けそうなほど熱を帯びた頬に触れる、まだ火照っていないバクラの頬がとても心地良い――
「んっ……ああぁっ! やっ……!!」
唇を塞がれたままバクラの手に胸の膨らみをゆるゆると揉みしだかれ、やがてしなやかな指が膨らみの先端を弾いた。
「あっ……バクラぁ……」
朦朧としつつある頭の中はいつのまにかバクラと、彼がもたらす感覚でいっぱいになっていて……ようやく唇を解放されたあともぼんやりとバクラの瞳を眺め続ける。
お湯に浸かっている下半身は中心に不自然な熱を帯び、こんな――
他に誰もいないとはいえ屋外で、しかもお風呂に入りながらこんな事をしているという現状が堪らない羞恥心を呼び起こし、嬉しさと背徳感がごっちゃになって胸を押し潰した。
絡まる視線が際限なく正常な思考を奪っていき、荒くなった呼吸のまま小さくバクラの名を呼んでみる――
「てめえ……なんつー顔してやがる……
桃香……今自分がどんな顔してるかわかってんのか?」
「わかんない……」
「……、チッ……」
「んっ……ああぁっ……!
やっ……だめっ……、あっ、やん……!」
お湯の中に沈められたバクラの手が私の膝を割り、その指がゆっくりと火照りの中心をなぞっていく。
脳天からつま先まで電流が勢いよく駆け抜けていき、背筋がのけ反り口からは否応なく嬌声が溢れ出した。
「ハッ……湯の中でもハッキリとわかるほど濡れまくってんじゃねえか……
どうして欲しいんだよ?」
「や……ちが……ん、あっ、ああっ……」
バクラの指が秘部を往復し、こみあがってくる堪らない快感と全身の火照りが、意識をどんどんもやの中へ追いやっていく。
「んぁ……ば、くらぁ……!
だめ……だめぇ……、んっ……」
潤んだ部分をなぞられたまま、また唇を塞がれると、呼吸を奪われさらに意識が朦朧と混濁していく。
頭は痛みを伴ってクラクラと平衡感覚を失いつつあった。
「ほんとに、今は……んんっ、だめ……」
さすがにこのままではマズイと思うものの、もはや否定の言葉すらうまく紡がれず――
それが恐らくただの羞恥からくるものだとの誤解をバクラに与えたまま――
「ば、くら……あ……」
収まらない快感が、さらに正常な意識を押し流し――
「……おい」
「…………」
やっとバクラがこちらの異変に気付いた時には。
混濁した思考はすっかり闇に落ち、私はそのまま意識を失ったのだった――――
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bkm