月下自戯2



思わず身体を起こし、カーテンをきっちり閉める。

そうすることが、今からする事に対する自分自身への宣言のようなものであった――




ベッドの上で座った体制のまま、パジャマの上から膨らみを弄び、爪で突起を引っかいてみる。

「ん、あぁっ……!」

甘い感覚がゾクリと全身へ広がり、下半身がきゅっと軽く収縮した。

それが何を意味するかには気付いたが、もはや自分の衝動を止めるほどの理性も理由も残っていなかった。


「バクラ……」

呟いて、パジャマの裾から手を入れ直に肌を撫でる。
ひんやりとした自分の手の感触を、バクラの手だと思い込むことにした。

そのまま上へ滑っていった手が膨らみへ……躊躇なく突起に指を這わせる。
すでに固くなった先端は、指の刺激を受けると全身に痺れの雨を降らせた。

「はぁ、ん……んっ……」

脳裏にバクラの艶やかな表情がちらついた。

不敵に嘲笑う顔――ちょっと憮然としたシリアスな顔――

行為の時にされるなら、バクラのどんな表情にでも頭がクラクラして淫靡な気持ちになってしまう。


「バクラぁ……」

唇は勝手にバクラの名前を紡いでいた。


片手で胸を弄びながら、もう片方の手を下半身へ――

先にズボンを脱ぎ、下着一枚になった。
晒された素脚が冷気を感じ取るが、今は構わない。


ショーツの上から指で割れ目をなぞる。

「んっ……、ああっ……!」

すでに湿った布が割れ目に張り付いて、布越しにでも柔らかい肉の感触が伝わってくる。

いやらしい自分の身体が堪らなく恥ずかしかったが、快感を求める切ない衝動には抗えなかった。


ショーツの中に指を滑りこませ、そっと割れ目をなぞる――

「あぁっ……! バクラぁっ……、」

つんざくような快感が電流となって全身を貫いていく。

指を軽く動かすだけで奥から蜜が溢れ、ぬるぬるとした感触が指に絡みついた。

「やっ……んっ……、ああっ、あっ……」

抑えられない嬌声が口から漏れだして気持ちを掻き立てる。


「バクラ……だめっ……、バクラぁ……」

愛おしい人の名前を呼びながらゆっくりと指を動かせば、脳裏にバクラの姿がちらついて堪らなく胸を焦がした。

ドクン、と高鳴った心臓は正常な思考を麻痺させていく。


堪えきれなくなって、ショーツを脱ぎ、横になると、パジャマの上着をたくし上げ双丘を外気に晒した。

片手で胸の突起を刺激し、もう片手の指で秘部をまさぐる――

誰かに見られたら自殺ものだったが、込み上げる快感があらゆる判断を鈍らせる。

(こんな醜いところ……バクラにもし見られたら死ぬより恥ずかしい……
というか死ぬしかない……!!)

不安が頭をもたげるが、潤んだ秘部をなぞり――敏感な芽に指を這わせたところで、あらゆる逡巡が霧散した。

「ああぁっ、あん……ああっ……!」

ぬるぬると芽をなぞり回すと、例えようのない快感が全身を支配し、無意識に身体をくねらせた。

「やっ……あっ……、ダメ……」

コリコリとした感触が指を通して伝わり、痛いほど膨張している事がわかる。

切なさが身体中を満たし、たまらず指を中に沈ませた。

「っ……! ばく……っ、」

バクラより細い指が中を往復していく。

入れられた感触もさることながら、指から伝わる自分のナカの熱くてぬめった感触も新鮮で――
ここにいつもはバクラが……と考えたら、胸が潰れそうになって呼吸を圧迫した。

そのうち心臓発作で死んでしまうのではないかと思う。


「バクラ……バクラ……」

我を忘れて、喘ぐ。


着信アリを示す、ケータイの存在すら忘れて―――




「あっ、あっ……やっ、だめ……!」

高みに上っていく感覚が堪らなく気持ち良くて、頭の中は次第に白くなっていく。


バクラ……、バクラ……


「好き……」

灼熱の温度で胸を焦がす慕情。

その想いの丈の半分すら、いつもは伝えられていない――

重すぎる愛なんて彼に迷惑だから――
否、そもそも、愛なんて伝えられるものなのか――?



「バクラ……! ばくらぁ……!

あいして、る……」



「そりゃあ光栄だな」



!!!!!!!!!



――なっ


「!!!???」


耳を震わせた声に身体が硬直する。


が、それは一瞬の事で、弾かれたように身体を起こした私は、指を引き抜き、掛け布団を掴んで全身に被りながらベッドに倒れこんで丸まった。


ドク、ドク、ドクと早鐘が激しく胸を打つ。

布団の中の暗闇の中で、何が起きたかわからずスパークした頭を抱えて眼を見開いた。


うそ……なっ……、なんで!?
だっ……え!?

だって、あの、この声は――


唇から全身までブルブルと震えだして喉は渇いて張り付いた。

驚愕、恐怖、羞恥、混乱――

あらゆる感覚が全身を支配し、身体と頭の自由を奪っていった。


うそ、うそ、嘘――!!!!



一瞬遅れて、涙が溢れた。


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