月下自戯



――バクラは気まぐれだ。


毎日のように私を呼びつけたかと思えば、パタリと連絡がなくなって、不安になるも――

宿主の獏良君の方は普通に学校に来てるし、遊戯君たちも普通だから特に問題があったふうには思えず……

密かにやきもきしているうちに、またふと連絡があって、安心するなんてことは日常茶飯事だった。


というのも、あちらからは、バクラが出ている時に私に直接話しかけるなり、私のケータイに獏良君のケータイから連絡してきて後で発信履歴を消すなり、アクションはいくらでも起こせるわけで。

一方私の方は、バクラに会いたくても声が聞きたくても獏良君のケータイに連絡するわけにはいかず――

否、一度だけ、バクラが出る事を秘かに期待しつつ、もし獏良君が出ても大丈夫なように話す用事を用意した上で、夜を待って獏良君のケータイに電話したことはあったのだが……

結果は、当たり前のように優しい声の獏良君の方が出て、軽く落ち込みつつも普通に用事を伝えた私は、もうこんな、獏良君にも自分の心臓にも悪い賭けはやめようと誓った、なんてこともあったか……

ともかく、離れている時にバクラがいつ『出ている』のか、なんてことは私にわかるハズがなく……

私はもっぱらただ、文字通り……『バクラの気が向くまま』、待ちに徹するしかないというのが現実だった。


――寂しかったり切なかったりすることはあれど、まあ仕方ない。


これが私の好きになった人――バクラなのだから。

それに、自分で決めた道でもあるから――


そう言い聞かせて、長い夜を過ごすのだ。



しかし――


会いたい時……寂しい時……側に居てほしい時……そして、触れて欲しい時……


堪らなく切ない気持ちになって、悶々とのたうちまわって、とめどないため息が口をついて出てしまう事がある。

人間だもの、そうやって弱い気持ちになってしまうのは仕方ない――


しかた、ない……









今夜は両親が不在だった。

そして私は堪らなくバクラに会いたい病に罹っていて――

獏良君と、借りたゲームの話を交えながら、今日は親がいないからゲームし放題だよ!というような、バクラが気付いてくれたらいいな〜なんていう密かな期待を込めたメールをやり取りしてみたりするのだが――

ふと、何やってるんだ自分!と我に返り、暗喩を込めたメールを獏良君のケータイに当てて送ってしまった事を激しく後悔する。


私、弱いな……


バクラの側に居たいなら、これくらいの寂しさ、我慢出来ないとダメなのに……。


ほどなくして獏良君から返ってきたメールに、心臓の鼓動を高鳴らせてはみたが、当然、その内容は他愛のない獏良了のモノで――

私はホッとすると同時にまた、はぁ〜〜と大きくため息をついたのだった。


悶々と想いを募らせていても仕方ない。

何たってバクラ――獏良――は、二心同体なのだ。

もちろん寂しさや恋しさなどという生温い感情とは無縁だろうが、自分の身体を好きな時に好きなように出来ないバクラ特有の辛さを思うと、当然そちらの方が何倍もきついわけで――

想像を絶するバクラの不自由さ、哀しさを思えば、こちらの会えない寂しさ恋しさ――
なんていうくだらない甘えた感情は、とにもかくにも封印しておくに限る!と改めて実感するのであった。


以前バクラが零した、オレ様に身体がありゃあ……という呟きは、切なさを纏って私の脳裏にこびりつき、離れてはくれなかった。

そんなバクラを思い出したら――
うっすらと目尻に涙が浮かんできた。


「三千年、か……」


獏良君とのメールを終え、部屋の灯りを消して、ベッドに横たわる。

カーテンを少しだけ開け、窓越しに夜空を覗いてみれば、満ちた月とまばらな星が輝いていた。


三千年前の夜空も今と同じだったのだろうか――

そんなセンチメンタルな感情が胸に迫る。


バクラの姿を想い、自分の腕で自分の身体を抱きしめる。

バクラの感触とは程遠かった。


そういえば、いつも、どんなふうに抱きしめられたっけ――

そっと、胸の辺りに手を置いてみる。

パジャマ越しにそっと、下着をつけていない膨らみを押してみた。

「ん……」

ぞわぞわとした感覚が身体中に広がった。

恥ずかしくなって手を引っ込める。

違う、今のは変な意味じゃない――そう自分に言い聞かせる。

しかし理性とは裏腹に、自らの手はもう一度膨らみへ向かっていた。


ぎゅむ、と、いつもバクラにされるように少し乱暴に膨らみを掴んでみる。

手の中に膨らみを捕らえたまま、ゆっくり円を描くようにそっと揉んでみた。


「んっ――」

違う、バクラはもっと――

手に力を込めて、少し乱暴に大きく胸を揉んでみる――

「あっ……!」

思わず声が漏れた。


やだ、なにやってるんだろう私――

こんなのって――


誰に見られたわけでもないのに、顔がみるみる火照っていくのがわかる。

「ばか……私……」

自虐的に呟いてはみるが、手はまたもや膨らみをまさぐり始めていた。


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