「桃香。何も考えんな。オレ様を感じてな……」
え――
いま、名前――
バクラの指がゆっくりと、潤んだ秘部の敏感なところをなぞり始める。
そこからは狂乱の嵐だった。
ぎっ、とベッドが軋み、潤みの中心に異物感を感じたと思ったら、熱を孕んだ杭が一気に身体をこじ開けて押し込まれた。
「あああぁっ!!!!
いっ……!!!!!」
圧迫感と痛みで、お腹の底から声が絞り出される。
バクラが刺さったところから、身体が裂けてしまうのではないかというほどの、鈍い痛みと熱。
思わず手を伸ばし、バクラの腕に強くしがみつく。
「んっ……、あぁぁ……っ!!!!
い、た……!!」
痛みを堪えるために力のままに掴んだら、彼はそれを振りほどかずに薄く嗤った。
「っ……、っ、ぁぁっっ!!!」
奥歯を噛み締めて声を必死に殺す。
ままならない呼吸。
激しい痛み。圧迫感、異物感――
自然と流れ出す涙――
「ヒャハハ!!
いいねえ、その苦痛に歪んだ表情……
ゾクゾクするぜ?」
とうとう声を上げて嗤ったバクラは、まだきつい私の体内をゆっくり往復していく。
「やっ……、待っ……、ゃ、ぁっ!!」
必死の懇願も届くはずはなく、とにかくバクラにしがみついた。
繋がったところが引き攣ってヒリヒリする。
「ヒャハハ、痛ェかよ! ククッ、ハハハッ……!」
「ば、くらぁ……っ!!!」
バクラは嗤いながら腰を揺らし、彼の下で無防備に揺れる私の胸をきつく掴んだ。
熱。痛み。情動。互いの体温。
身体を半ば強引に暴かれたはずなのに、それでも徐々に心地好い熱が全身を支配していく。快楽に溺れていく。
バクラ……バクラ――――
荒くなる呼吸と、自分のナカで暴れるバクラの存在。
彼は自身の荒ぶるもので奥を突き上げ、痛みも、涙も、バクラの存在が全て私に刻まれていく。
リングに宿る魂に塗りつぶされていくように、身体の奥底で膨れ上がっていく、痛みとは違う何か――
ふとバクラの上体が近付き、堪えきれず腕を首筋に回してかき寄せた。
「はッ……、
初めてのクセにもう気持ち良くなってんのかよ?
やっぱ淫乱だなオマエ……、」
わずかに息を乱しながら、バクラが耳元で囁く。
「や……っ!! ちがっ……、ちがう……!」
「ッは……! 違わねえ、だろ……ッ!!」
バクラの悪魔じみた軽口だか挑発だかが胸に刺さるが、直後に耳朶を甘く噛まれ首に唇を落とされると、また自然と喘ぎが漏れ彼の言い分を肯定する形となってしまう。
確かに彼の言う通り、身体を突かれるたびに痛みは遠退き、快楽が頭を擡げ、溢れ出しつつあった。
胸の内を滅茶苦茶に掻き毟る感情に涙が込み上がり、わずかに残る理性を散り散りに乱していく。
「あ……ん、やっ……、っ……気持ち、いいっ……! ん……!
バクラっ……、好き、すき……、すき……っ!!」
無意識のうちに口をついて出た、あられもない告白。
奥を突かれる度、頭の中が真っ白になっていく。
ビリビリと全身を麻痺させる甘い痺れが拡散する感覚を、自分でもはっきりわかるほど頭の奥で感じていた。
「くっ……、ハッ……、悪くねぇ、よ」
バクラが動くたび、胸元でリングがシャラシャラ揺れる。
合わせた身体の間で揺れたリングは、私の上にも広がり、ピタピタとした金属の冷たい感触を肌に与えていた。
朦朧とした意識の中で、ただそれを感じ、恍惚に浸る。
――頭の芯が痺れていく。
理性や、この世のルールや、常識といったあらゆる道理を、有無を言わさず上から塗りつぶす。
圧倒的な慕情。悪しき魂。
たとえ、肉体と精神が同一でない存在だとしても――
だって、好きになってしまった。
私は、バクラという存在を、愛してしまったのだ……!
きっかけなんて一言じゃ言い表せない。
ただ言えるのは、私はただ引き寄せられるように、気付けばバクラという闇の深淵を覗いてしまっていたということだ。
他の人では絶対に絶対に埋まらない、私を構成する魂の欠けた一部分。
その最後のピースが、不思議とバクラという邪悪な意思だったのだ。
それはまるで、あの千年パズルのピースのように。
ただ一つ欠けても、パズルとして完成しえない古の宝物のように。
この闇に触れたら、後戻りが出来ないことは分かっていた。
私のような一般人が、人智を超えた存在に触れたらどうなるか……
語るまでもない。
バクラという深淵はきっと、私を跡形もなく飲み込んでしまうだろう。
だが、それでも。
「バクラぁっ……、すきっ……ばくら……っ」
激しく身体を揺らされ、必死でしがみつく。
後悔などしない。
だってこれは、私が望んだことなのだから……!
そんなことを考えながら、潤んだ瞳でバクラに愛を囁けば。
満足そうに嗤った彼に、噛み付くように唇を塞がれたのだった――――
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bkm