...その後

傷だらけ血まみれの男が少女にナイフを突き付けて渇いた笑いをした。
少女は怯え、足が竦んで、地面に座り込んでいる。
「はっ、てめぇを殺せばあいつは、ヒソカはどうなるんだろうな……ぎゃっ!」
男が悲鳴を上げて少女に倒れ込んだ。
男の後頭部にはトランプが刺さっていた。
「…aaa、大丈夫かい?」
ピエロがトランプを切りながら現れた。
「あ、ヒソカ…」
少女、aaaは男が覆いかぶさったまま動けず、そこに座ったまま、ヒソカと呼ばれたピエロを見た。
ヒソカはaaaから死んだ男を引き離すと、aaaの血で濡れた頬を触った。
aaaの歯がカチカチと鳴り、目が見開かれている。
「大丈夫◆」
ヒソカはaaaを抱きしめると、aaaの絡んだ指から護身用の銃を離した。

aaaはヒソカの肩に顔を埋めると、大きく深呼吸をした。
鼻に、血の匂いが充満して、吐き気がした。
「う…っ」
びしゃびしゃと胃の中のものを吐き出した。
ヒソカが優しく背中をさすってくれた。
「ヒソカ」
どこからともなく、長い黒髪の男がヒソカとaaaの前に現れた。
「あぁ、その子がaaa?、死んでなくてよかったね」
針を持った男はヒソカとaaaに近付いた。
aaaは大袈裟に体を跳ねさせ、距離を置こうとした。
「aaa、大丈夫。イルミはボクの友人だから」
ヒソカがaaaの頭を撫でた。
「ひ、ヒソカ…私…」
いまだ現状把握に至っていないaaaは、ヒソカに尋ねた。
すると、ヒソカが言うには、自分の仕事で殺すはずだった相手を仕事を手伝っていたイルミがうっかり逃がしてしまい、しかもヒソカに恋人がいると知って、人質に取ろうとあるいはもっと非道なことをしようとしてaaaの前に現れたらしい。
そしてaaaがヒソカから持たされていた護身用の銃で応戦していると、ヒソカがやって来たというわけだ。

「まったく、キミのせいでaaaがかわいそうな目に遭ったじゃないか」
ヒソカはソファに腰掛け、溜息を吐いた。
「ごめんごめん」
抑揚のない声でイルミは言った。
「俺も逃がすとは思ってなかったんだよね」
ははは、とイルミは単調に笑う。
「……一般人がこんなに使えないだなんてね。仕事終わらせてくれるって期待してたのに」
「馬鹿言うなよ。aaaはボクやキミとは違うんだ」
ヒソカは部屋の扉を見た。
扉の向こうの寝室では、aaaが眠っている。
「そりゃそうだけど。あんな弱いやつのどこがいいのか」
イルミは血の色をしたワインを飲んだ。
aaaが人殺しに慣れていないことに、イルミは一瞬で気が付いていた。
「…こんなボクを追いかけてきたところかな◆」
ヒソカもワインを飲んだ。
「ふーん。それはすごいとは思うよ。ヒソカみたいな殺人鬼、普通は距離を置きたがるから」
イルミは悪びれることもなく言った。

その頃、aaaはベッドで目を覚ました。
「はぁっ…」
汗まみれの額を拭った。
どくどくと速い鼓動を落ち着けようと何度も深呼吸をして、渇いた喉を潤しに寝室を出た。
「……ヒソカ?」
リビングでヒソカと、イルミと呼ばれていた男の声が聞こえる。
aaaはリビングの扉に耳を寄せた。

「くくっ◆ ひどいなぁ」
ヒソカは足を組み、どこからともなくトランプを取り出した。
「aaaみたいなのがこんなところに来るなんて、奇跡だしね」
イルミは自分の針を見ながら言った。
ヒソカの眉がぴくりと動いた。
「ボクは…、光で生きるべき子を闇に落としたことを、奇跡だなんて思ったことはないよ」
ヒソカがいつもより低い声で言った。
「…ふーん。俺もう帰るよ。ワイン、おいしかった」
ワイングラスをローテーブルに置き、イルミは窓から出て行き、姿を消した。
「…aaa、いるんだろう?、おいで」

「!」
aaaはヒソカに声に体をびくつかせた。
なぜ気付いたのかと思いながら、リビングに入った。
「ヒソカ…」
「怖がらせたね。大丈夫かい?」
ヒソカはaaaを手招きする。
aaaはヒソカに従って、ソファに座った。
「…うん。ね、ヒソカ、私…」
「aaa、ボクの側にいると毎日のようにこんなことが起こる。いつかキミは人殺しをするかもしれない。それでもキミは…ボクの側にいるかい?」
aaaの言葉を遮ってヒソカは言った。
「ひ、ヒソカ…、それでも私は…ヒソカの側にいたいから…ヒソカのところに来たんだよ…」
aaaは震える唇を噛み締めながら、ヒソカのトランプをいじる手を触った。
「ボクは、キミを愛しているからこそ、あそこに置いてきたのにね…◆」
ヒソカはハンガーにかかったシスター服を一瞥すると、aaaの手を握り、優しく唇にキスを落とした。

聡明で優しく時に残酷な私の――神様。


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