※ヴァッサロードのオマージュ

シスターに拾われてから十年。
aaaは立派なシスターになり、人に尽くすようになったある日。
「シスター、私はここを出ていこうと思います」
「…なぜです?」
キリストに祈りを捧げていたシスターが、aaaを振り返り見た。
「…会いたい人が、いるんです」
「そうですか。……怪我をしないように」
母親のように想ってくれたシスターの見送りを受け、aaaはシスター服を着て教会を出た。

事前にヒソカのことは調べておいたのだけれど、詳しい情報は出てこなかった。
しかし地道に調べ聞いた情報は、ヒソカが暗殺の仕事を請け負っているという事実。
シスターのaaaにとって、それはあまりに酷だった。
「…ヒソカ」
手に入れた情報の中に、ヒソカが今日ある人物を殺すというものがあった。
aaaは覚悟を決めて、ヒソカがいるであろう場所へ向かった。
ヒソカに、会うために。

「午前三時…」
aaaが昔住んでいたところと似た廃墟で待っていると、物音がした。
「……ヒソカ?」
建物の内部に入ると、そこには血まみれの人が倒れていた。
「だ…っ、大丈夫ですか!?、しっかりしてください!」
aaaは慌てながらその人を抱えると患部を見た。
確実に助からない傷だ。
「…っ!」
こつん、と音を立てて、暗闇から誰かがやってくるのがわかった。
「…誰かな?」
月の光を帯びて、男が見覚えのある格好で、トランプを持って、aaaの前に現れた。
「…ヒソカ、」
aaaが男の名前を呼んだと同時に、ヒソカの腕が振り下ろされ、aaaの抱えていた人の首から血が噴き出した。
「…キミ、なんでボクの名前を知っているんだい?」
ヒソカは無理矢理aaaを立たせると、首元に、あの時のようにトランプを突き付けた。
「…覚えてないの?」
「質問しているのはボクだ◆」
ヒソカの目には、どことなく怒りが孕んでいる。
「キミはなんでボクの名前を知っているんだい?」
「あなたが…言ったから。…ヒソカ、私を、ほんとに覚えてないの…?」
aaaにとって十年前の記憶は色褪せていないけれど、ヒソカにとっては違ったのか。
「aaa、aaaだよ。……あなたが、付けてくれたじゃない…ヒソカぁ…!!」
aaaは地面に膝から崩れ落ちると、声を上げて泣いた。
「…aaa………aaa?、あぁ…aaa…◆」
だらしないaaaの泣き声の中、ヒソカは思い出したように、うずくまったaaaと視線を合わすために屈み、そして、aaaの頭を撫でた。
「…大きく、なったね◆」
aaaはその言葉に顔を上げると、ヒソカに抱き着いた。
「aaa…」
なびいたシスター服。

「ボクが昔のことを覚えてるなんて滅多にないんだよ」
ヒソカがトランプを奇術で消した。
「うっ…ヒソカ、私もう絶対ヒソカと離れたくない…!」
aaaは嗚咽しながらヒソカに縋り付いた。
「…aaa、ボクは汚れすぎてる。キミに堪えられるかわからないよ」
ヒソカは冷たい目でaaaの隣に横たわっている死体を見た。
「私は…」
ばさっ、とシスター服を脱ぐと、ヒソカを見た。
「ヒソカのためなら、なんでもする」
aaaが死体が隠していた銃を握ろうとすると、ヒソカが止めた。
「キミまで、汚れなくてもいい。そうだろう?」
ヒソカは銃をそのへんにぽいと投げると、立ち上がった。
「キミはそのままでいて◆」
aaaも立ち上がり、歩くヒソカを追った。
「ヒソカ、待っ…!」
歩幅の違う二人が歩くと、ヒソカが先に行ってしまう。
また置いていかれてしまうと急ぐと、ヒソカが出口付近で振り返り、aaaに手を伸ばした。
「行こうか、aaa◆」
「…うん」
ヒソカの手を握ると、前と同じで、とても温かかった。

夜明けの逆光でヒソカがうまく見えないけれど、それは私が昔見た神様に似ていた。


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