今夜キミのもとへ

※aaa:一般人

ああ、キミに会いたい――。

夜の十時、aaaは高校の学年末のテストに向けて、机に向かっていた。
一時間くらい、ケータイと教科書とノートを順に見ている。
あまり集中は出来ていないのだけれど、それでもそれなりの勉強はしていた。
aaaはぺらりと教科書をめくると、じっと眺めた。
難しい数字が羅列されていて、目が疲れるのを我慢しながら解き方を覚える。
すると、急にケータイが鳴った。
「わっ!!」
ヒソカからの着信だ。
aaaは慌ててケータイを取ると、通話ボタンを押した。
「はい、ヒソカさん…?」
「…aaa、久しぶりだね」
電話越しにヒソカの声が聞こえた。
「えっ、でも、一昨日会いましたよね?」
「そうだったっけ。……ねぇ、aaa、会いたい」
「……私も、です。ヒソカさん」
aaaはイスに背中をもたれた。
ギシ、と低く軋んだ音がした。

aaaとヒソカが出会ったのは二ヶ月ほど前。
aaaが休みに街中に買い物へ行っていたら、たまたますれ違った男がヒソカだった。
ただそれだけだったのだけれど、ヒソカは、なにか運命的なものを感じていたらしい。
その時、ヒソカはaaaの手を掴んだ。
「……キミ、なんて名前?」
ナンパなどの軽々しいそれとは異なった雰囲気のヒソカの態度に、aaaは見とれていた。

「aaa、キミ、今何してる?」
「えっと、勉強…です」
「そういえば、テストがあるんだっけ。ボク学校行ったことないからわかんないけど…」
ヒソカの声がいつもみたいに楽しげではないと感じたaaaは耳を澄ませていた。
「…aaa、外、見て」
「え?」
aaaは耳にケータイを当てたまま窓の方を見ると、カーテンに黒い影が写っていた。
まさかと思い、慌てて立ち上がってカーテンを開けた。
「や◆」
アパートの二階のベランダに、奇術師の格好をしたヒソカがいた。
aaaが急いで窓を開けると、春が近付いているというのに冷たい風が吹き付けた。
ヒソカは風と共に部屋に入ると、すかさずaaaを抱きしめた。
「会いたかった…◆」
「…ヒソカさん?」
窓に手を伸ばして閉めると、aaaもヒソカの背中に手を回した。
「aaa…」
頬を撫でるヒソカの手が少し震えているのに、aaaが気付いた。
「ヒソカさん…」
aaaが困った顔をしているのを目の端で捉えたヒソカ。

言えない 何も聞かないで
笑って欲しい

ヒソカはまったく動かずaaaを抱きしめている。
aaaは、自分にしてくれる時のように、ヒソカの頬を優しく撫でた。
「大好きです…」
aaaは照れながら微笑んだ。
「……ボクもだ、ボクも、愛してる◆」
ヒソカはaaaの髪に手を絡めて、顔を近付けてキスをした。
「ん…っ」
「はあ…」
唇を離すと、唾液が線となって二人を繋ぐ。

喜びよりも悲しみよりも ただ君の事を考えているよ

「なんだか急にaaaに会いたくなってね…◆」
いまだ震える手を、ぎゅっと握り締めて、ヒソカはaaaに笑いかけた。
aaaはどきりと胸が高鳴って、ヒソカから顔を逸らした。
「aaa…◆」
ヒソカはaaaの顔をがっちりと掴んだ。
aaaは間近にあるヒソカの端整な顔立ちに頬を真っ赤にさせ、目を閉じた。
「目、開けてよ」
「み、見れないです…」
「ねぇ、お願い◆」
ヒソカの懇願に、aaaはゆっくりと目を開けると、目の前にヒソカの顔がドアップ。
aaaは顔から火が出そうになった。
「やっと、目、合わせてくれた…」
ヒソカはaaaの額に自分の額をくっつけた。
「え…、ヒソカさん、泣いてるんですか…?」
近すぎてよくわからないけれど、ヒソカの瞳から涙が出ている気がした。
「そんなことどうでもいい。キミがいれば…」
ヒソカの腕はaaaをまた抱きしめ、ほんの数分が、何時間にも長く感じられた。

今夜君の部屋の窓に
星屑を降らせて音を立てるよ
言えない 何も聞かないで
笑って欲しい
喜びよりも悲しみよりも ただ君の事を考えているよ
今夜 君のもとへ


〇Message
鬼束ちひろのsignの歌詞を一部引用


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