ア イ シ テ ル

「ヒソカ、大好き」
「ボクも◆」
「……ばかっ!」
ヒソカの表情はいつも変わらず笑っている。
セリフをたいがい同じ「ボクも」。
「なんで、そんな……同じすぎるわ!」
「何がだい?」
にっこにっこと笑ったまま、ヒソカがaaaを見た。
「ヒソカは何、それしか言えないの?」
「え?、そんなことないよ?」
キョトン、と目を丸くするヒソカ。
「じゃあ、言ってよ」
「……大好き◆」
淡々とした言葉には、感情がこもっていない。
「…どこが!」
全然愛してないだろ、とaaaは叫んで頭を抱える。
「え…、全部。あえて言うなら顔も体も性格もボクの好み◆」
「そういう意味じゃなーい!」
「aaa、一度落ち着きなよ」
ヒソカがaaaの背中をぽんぽんと叩いた。

とりあえず、aaaはヒソカに感情がなさすぎるという旨を話した。
「…昔からこうなんだ、治るわけない」
ヒソカはすっぱりと言い放った。
治す気はさらさらないらしい。
「やってみなきゃ意味ないよ!」
「面倒くさいし、治って良いことなんかないよ」
「そんなことないよ!……私が、嬉しい」
耳まで真っ赤にしながら、aaaが言う。
「それはいいかもしれないけど…」
ヒソカは言葉に詰まった。
aaaが続きの言葉を気にしてヒソカを見る。
「人を殺す時に躊躇ったら仕事に支障をきたすし」
「じゃあ人を殺さない仕事をしたらいいじゃん」
「……習慣を直すことは難しいんだよ」
ヒソカが強めに言った。
「ヒソカ、私は…」
「aaaのことはちゃんと好きだよ。それだけじゃ駄目なの?」
冷たい瞳でそう言われれば、口を噤むことしか出来ない。

(気持ちがあってこそのアイシテルなのに!)

「ヒソカ、キスしよ!」
「うん◆」
甘いキスをして、唇を離してヒソカを見るが、表情はたいして変わっていない。
「ヒソカ私のこと嫌いなの!?嫌がらせ!?」
うがああと叫びながらaaaが頭を抱える。
ヒソカが自分のことを好きなのか確かめるのが目的というわけではなく、愛しているのなら顔が綻んでもおかしくないという見解は間違いだったようだ。
前にも何回か、テレビでやっていた芸人のコントをそのままやったり、嘘で泣いてみたりしたが、「面白いね◆」や「泣かないでよ◆」といつもと変わらない薄く笑った表情で言うだけだった。
「aaa、前にも言ったけど…」
「知ってる!けどやっぱりヒソカの心からの笑顔ってやつが見たいんだもん…」
ぷー、と頬を膨らませるaaa。
ヒソカが膨らんだaaaの頬を人差し指で押すと、口から空気が出ていった。

「…aaa◆」
くく、と喉を鳴らしてヒソカが微笑んだ。
aaaはそれに気付かない。
(馬鹿だなぁ、aaaは◆ もうとっくの昔にボクはキミを愛しているのに)
馴れない感情のせいか上手くaaaには伝わっていないようで。
奮闘するaaaが可愛くて、あえて言わなかった。
「ヒソカ?」
aaaがヒソカの顔を覗き込む。
「aaa…、ボクはこの感情の名前を知らない。けど言い表せはするんだ」
「…?」
ヒソカはaaaの頬を撫でた。

「ア イ シ テ ル ◆」

すべての愛情を込めて、aaaに微笑んだヒソカ。
aaaは、瞬間に顔を真っ赤にさせた。
「愛してるんだ、aaa」
そう言って、ヒソカはaaaの唇を奪った。

名前を知らないから、扱い方がわからなかっただけなんだ。


〇おまけ
「もし感情が戻ったらどうしようか。怖いって思ったらどうしたらいい?」
ヒソカがaaaに尋ねた。
「えーっと……目つむったら?」
「……現実逃避はちょっと」


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