あなたのすべてを

小さい頃、お隣さんだった子は私より小さくて可愛くて泣き虫で強がりだった。
でも今は全く面影もない、感情をなくした笑う人間、本人は奇術師だと言ってた。
一体どんなことがあったらこんな風になれるものなんだろうか。

「aaa、愛してるよ◆」
普段、誰にも見せないであろう優しい微笑みを浮かべたヒソカが言う。
「…ありがとう」
苦笑いをしながら、aaaはヒソカに言った。
「aaaはボクのこと愛していないのかい?」
ヒソカは寂しそうにaaaを見た。
「そういうわけじゃ…なくて…」
「じゃあ、なに?」
ヒソカは言葉に詰まるaaaに近寄って、くい、と顎を掴んで無理矢理目を合わせた。
「…私は、小さい頃ヒソカのこと好きだったよ。でも、今のヒソカ、昔と全然違うでしょ。…私、どう接していいか…」
昔のように可愛がるのも変だ、と思いながらaaaはヒソカから目を逸らした。
ヒソカは手を離してaaaの隣に座る。
「aaaは、今、ボクのこと、嫌いかい?」
aaaは無言で首を横に振った。
「じゃあ、好き?」
「…好きだよ、うん…。でも、」
aaaがヒソカに会ってからヒソカは毎日のようにaaaにアプローチして、今の状況が出来上がっている。
ヒソカが昔の隣近所の子供だったとわかってからはそれなりにaaaはヒソカに胸を高鳴らせ始めていたのではあるのだけれど、問題があった。
「でも?」
ヒソカが聞き返す。
「私…、ヒソカのこと何も知らない…」
aaaは眉を八の字にして言った。
「ヒソカを愛すのなら、すべてを知ってすべてを愛したい…!」
aaaはヒソカに縋り付くように抱き着いた。
「aaa…◆」
ヒソカは優しく笑うと、aaaの隣に座った。
「じゃあ、aaa。何が知りたい?」
そうヒソカが尋ねる。
「え…っと」
「…昔話をしようか」
ヒソカは戸惑っているaaaを察知して言った。
aaaは驚いた表情をしてヒソカを見たけれど、ヒソカの顔は変わらず飄々としている。
「ボクはね、aaaと別れてから…」

ヒソカの過去はaaaの想像を超えて常軌を逸していた。
ヒソカはaaaのもとを引っ越してから、戦いに目覚め、人を殺しセックスをするという自身の快楽のみを求めて生きてきたようだ。
中でも、強いやつを殺した時の快感はすごかったという話は衝撃を受けた。

「……!!」
aaaは生唾を飲み込むほかなかった。
「…こんなに汚いボク、イヤだよね」
ぽつりと呟いたヒソカに、aaaは思わず涙を流してしまった。
「同情なんかいらない」
ヒソカは静かに泣くaaaに冷たく言い放つ。
「…違うよ。ヒソカが、あなたが…、愛しい……!」
aaaは涙を拭いながら俯いた。
「aaa…」
ヒソカは震えているaaaの体を抱きしめた。
口元に微笑みを浮かべて。
「愛してるよ◆」
「私も、大好き。愛してる…」
溢れる涙はそのままに、aaaはヒソカと口づけを交わした。

あなたのすべてを受け入れよう。


「これで正式に付き合うってことでいいんだよね?」
「えっと…、うん。そうだね」
aaaが頷く。
「じゃあこれからは、ボクが前から言ってきた分、多めに愛してるって言ってね◆」
ウィンクをするヒソカ。
「な…なにそれ!!」
「愛してるって言ってくれないの、なにげ寂しいんだよ」
しょんぼりと悲しげな表情をするヒソカに、aaaは罪悪感が沸いてきた。
「う…あ…愛してる、から。ちゃんと…」
「ボクも◆」
ふわりと笑って投げキッスをしたヒソカに、ばかっと小さく呟いたaaaだった。


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