心中

「私が死ぬとき、一緒に死んでくれる?」
なんて、言えるわけがない。

「ただいま、aaa◆」
仕事から帰ってきたヒソカはソファに座っていたaaaの肩をぽんと叩いて、aaaの横に腰を下ろした。
「おかえりっ、ヒソカ!」
aaaはヒソカに抱き着き、ヒソカの顔を見た。
ヒソカはaaaの頭を撫でて、にっこりと笑った。
「疲れた?」
「んー…まぁ、それなりに、ね」
aaaの問いに、ヒソカは、ふぅと溜息を吐いて答えた。
「…おつかれ」
aaaはヒソカの後頭部に手を添えて、唇を重ね合わせて軽くキスをした。
「ん…、ん?」
どこからともなくピルルルと携帯の着信音。
この音は多分のヒソカの携帯だ、と思いaaaがヒソカを見ると、ヒソカは奇術を見せてどこからともなく携帯を取り出してみせた。
aaaが頭の上にクエスチョンマークを浮かべていると、ヒソカは電話に出て「どうしたの、イルミ」と言った。
「イルミさんか…」
aaaが小さく呟くと、ヒソカはaaaを膝から下ろして別の部屋に移動してしまった。
「……仕事かな」
さっきまでヒソカが受けていた仕事はイルミとやっていたそうだから、多分そうだろうと自己解釈をして、aaaは暇だと思いながらリビングを徘徊した。

ダイニングテーブルに血が付いたトランプが数枚。
「……」
きっと、ヒソカが仕事で使ったものだろう。
aaaはそれを手に取った。
ジョーカーとスペードのエース、他にも何枚かある。
「……」
ヒソカに殺された人がかわいそうだと思いながらaaaは、そっとトランプを首に当てた。
念を使わなければ、ただの普通のトランプで、首が切れるわけもない。
「…一人で死ぬのって、怖いのかなぁ」
「どうだろうね◆」
「うひゃあっ!ヒソカ!」
電話をしているはずのヒソカの声が後ろからした。
aaaは驚いて振り向くと、にっこりと微笑んで彼が佇んでいる。
「トランプを見てそんなことを思うなんて、キミは変だね◆」
「変って…、ヒソカに言われたくない」
aaaは唇を尖らせて、ヒソカを軽く叩いた。
「これ、血がとれなくってさ」
aaaの手からトランプを取って、ヒソカはまじまじとトランプを見た。
血が酸化して黒ずんで、なんのカードかわからない。
「捨てるの?」
「うん、もう使えないし」
ヒソカはトランプを奇術で消した。
「で、aaaはなんだ、死にたいのかい?」
「そういうわけじゃない、けど、ただ…死ぬときどんな感じなのかなって思って」
「…そうだねぇ、気持ちいいかもね◆」
顎に手を当てて考えるヒソカ。
「テレビとかではよく寂しいとか怖いとかって聞くよね」
「へぇ」
aaaはイスに座って、立ったままのヒソカを見上げた。
「…死ぬときは、ヒソカ、側にいてね」

寂しくないように、怖くないように。
本当は、一緒に死んでと言いたいけど、ヒソカの性格からみて、泣いてもくれなさそう。

「ん?何を言っているんだい?」
ヒソカはきょとんとして、aaaの顔を覗き込むようにして見た。
死ぬときでさえ願いは叶えてもらえないのか、とaaaは悲しくなってヒソカから視線を反らすと、「aaa◆」と名前を呼ぶ声が聞こえた。
「死ぬときは一緒だよ。aaaがボクを殺して、ボクがaaaを殺すんだ」
ヒソカはさも当然そうにそう言うと、aaaの頬に触れた。
「…なんで?」
aaaはヒソカの思考回路が読めず、顔をしかめた。
「ボクがaaaと離れたくないから◆ 好きな子とは一緒にいたいだろ?」
ヒソカはaaaの唇をふにふにと撫でながら笑う。
「ひ、ヒソカってそんなだったっけ?」
「そうだよ、ボクはaaaが大好きで愛してる」
ヒソカがaaaをむぎゅうと抱きしめると、aaaもヒソカの背中に手を回した。
「嫌かい?」
「ううん、嬉しいよ…、すっごく」
「ん、イイ子◆」
ヒソカはaaaをひょいと抱き上げると、軽くキスをした。


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