美しい被写体

※学パロ(サンジ:先輩 aaa:後輩)

「写真部のaaaです。こんにちは…」
「はじめまして、サンジです」
すっとaaaに手を差し延べたサンジは、にっこりと笑っていた。

料理部の部長のサンジは一眼レフカメラを持ったaaaに、イスに座れと命令されて足を揃えてカメラのレンズを見ていた。
「で、なんでおれはこんな状況に…?」
サンジがaaaに聞いた。
「えっとですね、新聞部との合同企画で、卒業する三年生のイケメン特集をするそうです。ちなみに去年はマルコ先輩とエース先輩でした。今年はゾロ先輩と…」
「ゾロと、おれ?なんで?…イケメンなの?」
サンジは自分を指差しながら苦笑いをした。
自分が整った顔をしていることを知らないことに、aaaは目を疑った。
(さっきまでいた女子がなんでいるかもわかってなかったってこと?)
「へぇー…新聞部は来ないの?」
サンジが足を組んで、aaaを見た。
「…ゾロ先輩に手間取ってて、当分は無理だそうなので、写真部は先に密着取材させていただきます」
「…写真撮るだけなんでしょ?」
密着取材という言葉にぴくりと反応したサンジ。
「はい。部活中に邪魔しない程度に。あとは放課後にたまに…行くかもしれません」
こくりと頷いたaaa。
「一週間、写真を撮らしぇ…っていただきます。お願いします」
aaaは半ば早口で言うと、噛んだことで真っ赤にさせた顔を見られまいと頭を下げた。
「よろしくね」
サンジはくすくすと笑いながら、aaaと握手した。

aaaの言っていた通り、aaaはサンジが部活中は部屋の隅でずっとカメラを持って、さえない音を立ててサンジを撮り続けて三日経った。
部活が終わって、サンジとaaaは帰る用意をしていた。
「…ねぇ、aaaちゃん。これ、あまったんだけど食べない?」
aaaを手招いて、サンジは今日の作った料理を見せた。
aaaはサンジを見ながら行こうか行かまいか悩み、その場に突っ立っていた。
「……おいで」
サンジはaaaに歩み寄り、そっと手を繋いで料理の置いてあるテーブルに連れていき、イスに座らせ、サンジも横に座った。
「…おいしそう、ですね」
aaaはカメラを出して、パシャリと撮った。
「当たり前だろ、おれが作ったんだからな」
にっ、と笑ったサンジが言った。
「いただきます」
はしを取って、aaaはサンジの料理を味わった。

四日目の放課後。
今日は部活がないからaaaに会えないと思っていたサンジは、教室の扉から覗き込んでいるaaaに心底驚いた。
「どうしたの?」
aaaに近寄り、話しかけたサンジ。
aaaは物珍しそうに教室を見渡している。
「今日は部活がないので、部活以外のサンジ先輩も撮っておこうと思って…」
「そう。入っておいでよ」
サンジはaaaの頭をぽん、と叩いて、自分の席に戻った。
aaaはサンジのあとについていく。
「なんだ、てめェもか」
「あァ、そうみてェなんだよ」
ゾロとサンジが向かい合わせに座っている。
サンジは自分の前の席のイスを引くとaaaを座らせた。
「あの……サンジ先輩とゾロ先輩は何してたんですか?」
ケタケタと笑い合うサンジとゾロに、aaaが聞いた。
「ん?マンガ、マンガ読んでたんだよ。これ面白いよ、読んでみる?」
「おれのだっつの」
ゾロのツッコミにへら、と笑ったサンジを見て、aaaは素早くカメラを構えて撮った。
「あ…っ、恥ずかしいな。こう、近くだとよ、撮られてるってわかって、なんか、変な感じだ」
ぽりぽりと頭を掻いたサンジ。
ゾロはマンガに取り掛かった。
「そうですか?…いつも通りかっこいいです…け、ど」
するりと出てきた言葉にaaaは自分自身うろたえた。
「…ありがとう」
急な褒め言葉にニヤけた顔を隠しきれないサンジがaaaにお礼を言った。
「あ…、はぁ」
だんだんと赤くなっていくaaaの顔。
(バカ!そんなこと考えたら腕が鈍るでしょうが!)
ふるふると頭を振って邪念を振り払って、aaaはカメラを持つ手に力を入れた。
「あと、もう一枚撮りますね!」
「うん」
aaaはサンジをカメラ越しに捉えた。
(綺麗な人だなぁ…)
シャッターボタンを押した。

「aaaちゃん、もうこんな時間だけど……送っていこうか?」
「いっ、いえ!別に大丈夫ですから!」
「じゃあ…、下まで一緒に下りよう?」
サンジとaaaはマンガを読んでいるゾロと別れて、靴箱に向かった。
サンジはすぐに靴を履きかえ、aaaのもとに向かうと、aaaがちょうど靴を履きかえていた。
「あ、…っと!」
ふらりと体勢を崩したaaaは、とす、とサンジの胸に顔を突っ込んだ。
「大丈夫?」
aaaの頭をさらりと撫でたサンジ。
aaaは不意にどきりとした。
「ごごごごめんなさい!」
「いいよ。ていうか、少しこのままでいさせて?」
サンジはaaaの背中に手を回して、ぎゅうと抱きしめた。
「サンジ先輩…?」
aaaは体を固くして、サンジの上着を引っ張った。
「さっ、帰ろうか」
「…?、はい…」
数分抱きしめると、サンジはaaaを離すと校門を出て、手を振って帰ってしまった。

恋人でもないのに、なんで――。

翌日、五日目、密着取材もこれで終わり。
サンジの部活が終わって、サンジを取り囲んでいた女子ももういない。
「…サンジ先輩、一週間ありがとうございました」
「いいえ」
サンジはaaaに微笑んだ。
「あと、一枚だけ撮らせてほしいんですけど…、あ、でも、そのままの先輩が撮りたいので、自由にしててください」
「え?、あぁ…、うん。わかった」
サンジはシンクとテーブルを拭いて、換気のために窓を開けた。
びゅう、と十二月の風がサンジとaaaを包んだ。
サンジが髪をかき上げるところを見て、aaaは自然とカメラのシャッターを切った。

なんて、綺麗な被写体なんだろう。

「…aaaちゃん?」
シャッター音に気付いたサンジがaaaを見て驚いていた。
カメラ越しにサンジを見たまま、aaaは泣いていたのだ。
サンジは無言でaaaに歩み寄ると、そっとaaaを抱きしめた。
「どうしたのaaaちゃん、泣かねェでくれ」
とんとん、と背中を優しく撫でたサンジ。
「…いつまでも、あなたを見ていたいと、そう思ってたらいつの間にか泣いてたんです…」
ごしごしと目をこするaaa。
「……じゃあ、ずっと見れるようにしてあげる。おれと付き合って?、aaaちゃん」
サンジはaaaの返事を聞かないままに唇を重ね合わせた。
「っはぁ…、サンジ…先輩?」
「aaaちゃん、おれに惚れてるんだろ?」
にっ、と子供っぽく笑ったサンジは、aaaの頬にちゅっと可愛く音を立ててキスをした。
「うっ…なんで、バレて…!」
「バレバレ」
視線とか、とサンジはウィンクをした。
「サンジ先輩は…なんで私を好きに…」
「ん?ナイショ。さて、これからは写真部とか関係なく写真撮っていいし、教室にもおいで」
舌なめずりをしたサンジはaaaに微笑んだ。

aaaちゃんに惚れた理由――写真を撮る君に惹かれたから、かな。



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